2015 Fiscal Year Research-status Report
植物スフィンゴ脂質の分子機能解明と代謝改変技術の確立
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15K20909
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
石川 寿樹 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20598247)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スフィンゴ脂質 / スフィンゴリピドミクス / 代謝改変 / ストレス耐性 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
1. シロイヌナズナやタバコ等の双子葉植物に加え、イネやコムギ等の単子葉植物のスフィンゴ脂質分子構造を同定し、それらをLC-MS/MSにより一斉定量解析するスフィンゴリピドミクスの手法を確立した。これにより、イネ組織間のスフィンゴ脂質分子組成の多様性や、極長鎖脂肪酸合成異常によりシュート形成不全を示すonion変異体における脂質代謝変動を網羅的に捉えることに成功し、本手法の実用性を実証した (論文投稿中)。本手法の活用により、植物スフィンゴ脂質の多様性とその生物学的意義が明らかになることが期待できる。 2. スフィンゴリピドミクス解析により、細胞死抑制因子Bax inhibitor-1が植物スフィンゴリピドームに及ぼす影響を明らかにした。さらにスフィンゴ脂質が集積する細胞膜マイクロドメインのプロテオーム解析を行い、ストレス誘導性細胞死において重要な役割を果たす新規因子を同定した。本成果はPlant Physiol誌に発表した。 3. スフィンゴ脂質セラミド骨格および糖鎖構造を形成する代謝酵素群について、シロイヌナズナやイネを用いて欠損変異体、発現抑制体、過剰発現体等の作出を進めた。特に長鎖塩基不飽和構造を人為的に改変したシロイヌナズナおよびイネにおいて、酸性ストレスやアルミニウムストレス耐性の変化が示唆された。 4. 長鎖塩基不飽和化酵素をもたない出芽酵母を用いて、様々な植物種由来の不飽和化酵素や人為的にアミノ酸やドメイン構造を置換したキメラ型酵素の特性を簡便に解析する手法を確立した。さらに産物である不飽和型スフィンゴ脂質の生理学的解析として、アルミニウム耐性試験が有用であることを見出した。本実験系を用いることで、生理学的・生化学的機能を有するスフィンゴ脂質分子構造とその代謝酵素を迅速にスクリーニングすることが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフィンゴリピドミクス手法の確立は順調に進み、本手法を活用したイネスフィンゴ脂質の網羅的プロファイリングや微量膜脂質の定量など、これまでの手法では困難であった分析データを得ることができた。この成果は既に学術論文として1報を報告、さらに関連した3報が現在査読リバイズ中であり、手法の確立と活用、成果発表の点では当初の計画を大きく上回る進展となった。また代謝改変植物の作出や酵母発現系の構築は概ね計画通りに進行中であるが、年度後半にLC-MS/MS分析装置の不具合が長引いた影響により、予定していた代謝酵素改変植物や多様な単子葉植物群の大規模なスフィンゴリピドミクス解析を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは計画から遅れているスフィンゴリピドミクス解析を早急に進める。特に初年度に作出を進めてきた代謝改変植物系統のスクリーニングを重点的に行い、成長評価やストレス耐性試験等の生理学的解析を進めるための系統確立を第一に遂行する。予備解析において、一部の系統では低pHやアルミニウムイオンなど、酸性土壌におけるストレス種へ応答性の変化が示唆されており、これらのストレス耐性を中心に解析を進める。また植物を用いた解析に加え、酵母発現系を用いた迅速な代謝改変・機能解析系を確立できたため、これにより植物型スフィンゴ脂質に特徴的な分子構造が形成される分子機構を解析し、生理活性をもつ脂質構造を効率よく産生させるための遺伝学的ストラテジーの提案やアミノ酸人工改変による高機能性酵素の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
年度後半にLC-MS/MS分析装置に原因不明の不具合が生じ、復旧に約5ヶ月要した。このため、予定していた大規模脂質分析や分析手法のさらなる改良等に用いるためのLC-MS/MS関連試薬類、ガラス器具及び消耗品については、大半が未購入である。また、形質転換植物の作出は順調に進んだものの、脂質分析によるスクリーニングが進まなかった関係で、予定していた物品費、謝金等の一部の使用を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新年度に入りLC-MS/MS装置の不具合が解消し、分析可能な状態に復旧したため上述の延期していた研究に取り掛かる。これらは2年目の使用額として申請したものとは独立して必要な経費であり、それぞれの研究内容を並行しながら遂行する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] KONJAC1 and 2 are key factors for GDP-mannose generation and affect l-ascorbic acid and glucomannan biosynthesis in Arabidopsis.2015
Author(s)
Sawake S, Tajima N, Mortimer JC, Lao J, Ishikawa T, Yu X, Yamanashi Y, Yoshimi Y, Kawai-Yamada M, Dupree P, Tsumuraya Y and Kotake T
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Journal Title
Plant Cell
Volume: 27
Pages: 3397-3409
DOI
Peer Reviewed
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