2015 Fiscal Year Research-status Report
表現の自由の保障範囲に関する比較法的考察―孤独な表現に対する所持規制を素材として
Project/Area Number |
15K20912
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大林 啓吾 千葉大学, 大学院専門法務研究科, 准教授 (70453694)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表現の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、表現の自由の保障範囲について、特に孤独な表現に対する所持規制の検討を行うものである。平成27年度は渡米して資料収集を行い、判例分析の一部を行った。以下は平成27年度に行った研究の概要である。 コミュニケーションをとることを意図していない孤独な表現は表現の自由として保障されるのかを検討するのが本研究の目的である。その研究を進めるために、そもそもいかなる表現が憲法上保障されるのかを明らかにしなければならない。そこで、アメリカにおける表現の自由の動向を探るために、アメリカに行って大学図書館や本屋で表現の自由一般に関する文献や表現の自由の保障範囲に関する文献を収集した。また、児童ポルノやわいせつの所持規制の合憲性が問題となった事件の判決文を集めると同時に、表現の自由の保障範囲に関する最近の判決、そしてインターネット上の発言に脅迫罪を適用することが問題となった2015年のElonis判決の判決文も入手した。 資料入手後、文献や判例の読解作業に入った。文献からは、表現の自由を包括的に保障しようとする流れと価値に基づいて序列化する流れがなお対立していることが判明した。また、最近の判例を読むと、ロバーツコートが表現の自由を厚く保障する傾向があり、保障範囲を広げていることが明らかになった。特に、2015年のElonis判決は表現の自由を正面から取り上げなかったものの、真の脅威にあたらなければ罪に問えないとしたことから、真の脅威に当たらない表現は保護されたといえる。その意味で表現の自由の保障範囲の問題に関係するため、同判決に関する評釈を執筆した。 したがって、平成27年度は、資料収集および資料読解を行い、表現の自由の保障範囲に関する学説動向と判例動向を考察し、2年目に向けての基盤を作り上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載の通り、平成27年度は資料収集を中心に行う予定であった。実際に関連資料を集めることができ、さらに読解も進んだので、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き、文献や資料を収集しながら、その読解作業を行う。文献収集については、外国に渡航(アメリカ・カナダ)する予定である。
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Causes of Carryover |
研究遂行のためにパソコンの購入を予定していたが、既存のパソコンのアップグレードで対応できたため、購入しなかった。そのため、約10万円繰越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については、外国渡航費用が計画よりも多くかかる可能性があるため、それにまわす予定である。
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Research Products
(1 results)