2015 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧種アカウミガメの産卵回帰行動の可塑性を利用した生息域外保全手法の提案
Project/Area Number |
15K20920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 宏美 東京大学, 空間情報科学研究センター, 特任研究員 (80649757)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行動可塑性 / 産卵回帰行動 / 生息域外保全 / 移動性野生動物 / アカウミガメ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、絶滅危惧種アカウミガメの産卵回帰行動の可塑性を利用した生息域外保全手法の提案を目的とする。従来の生息域外保全では、人為的に工程管理を行うため、野外生態が不明で手法の効果査定ができない移動性野生動物などの絶滅危惧種を対象とすることができなかった。そこで、本研究では、行動可塑性を利用して、動物自身が新たな生息環境を探し増殖して適応することで、野生復帰する方法を、絶滅危惧種アカウミガメで試みる。そのために、a)産卵回帰行動の可塑性を抽出し、b)可塑性に影響を与える環境要因(地形・経験)を調べる。c)生活史特性から、産卵回帰行動の可塑性の適応性を調べる。d)放流実験により新たな産卵地に回帰するか確認する。もし、行動可塑性の高い柔軟なアカウミガメが適応的な産卵行動を行っていた場合、この個体を新たな産卵地に移植すれば、自身の選択で産卵回帰するため、飼育の必要なく増殖できる。また、移植後新たな産卵地に繰り返し回帰した場合、長期的な復帰計画なしで、野生復帰が可能となる。また、産卵場所の詳細な地形の特徴と雌の経験頻度から移植する場所と個体の検討が可能になる。 2015年度は、2014年度の予備実験に引き続き、屋久島うみがめ研究会によるアカウミガメの産卵行動の調査記録を用いて、a)産卵回帰行動の可塑性の抽出を行った。まず、産卵行動の記録から個体別に巣穴の総数や産卵成功の頻度を算出し、産卵間の距離および方角との関連性を調べて、産卵成功の経験が産卵位置の選択性に与える影響を調べた。また、子の適応度成分との関連性を調べ、産卵位置の選択性の適応的意義について検討した。これらの結果から、産卵成功の経験が産卵回帰行動の可塑性に影響を与えていることが示唆された。さらに、可塑性の高い個体と低い個体が産卵した場所の地形や照度など物理的環境の比較を行い、可塑性に影響を与える環境要因の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は産卵回帰行動とその行動に与える環境要因および子の適応度成分の観測を予定通り 行った。また、H27年度に行う産卵回帰行動の可塑性検証のための放流実験を前倒して行う予定だったが、送信機の不良により追跡ができず機体していた結果が得られなかった。そのため、当初の予定通りH28年度に放流実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の放流実験が失敗した結果を踏まえて、個体数の増加、送信機種の変更、放流時期の調整などの適切な対策を講じ、本年は予定通り実験を行い、確実に結果を得る予定である。
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Causes of Carryover |
H28年度実験予定だった調査項目について、H27年度中に準備が整ったので前倒して一部の実験をH27年度に行うことが可能となったため、予定よりも多くの金額が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
もともとH28年度に行う予定だった実験の一部を前倒して行っただけなので、残りの予算で残りの実験を予定通り進めることで、研究目的を確実に達成する。
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