2016 Fiscal Year Research-status Report
企業再生税制の歴史的・機能的側面からの分析に基づく政策論の展開
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15K20926
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
長戸 貴之 学習院大学, 法学部, 准教授 (90632240)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業再生税制 / 事業再生 / 租税属性の移転 / 株式と負債 / リスク・テイキング / クレーム・トレーディング / 交換募集 / コーポレート・ファイナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
企業再生税制について比較法的・機能的に分析し,立法政策論を展開する作業を行った。その具体的な研究成果は『事業再生と課税』(東京大学出版会,2017)等の形で公表した。
昨年度までの段階で,日本とアメリカにおける企業再生税制の歴史的沿革と展開を分析する作業を通じて,平時における租税属性の売買の禁止という租税政策と,事業再生局面における再生企業への課税上の有利な取り扱いという倒産政策をどのような関係性の下に位置づけるかという視点を得ていた。そこで,本年度は,機能的視点からの分析に重点を置いて研究を進めた。機能的視点からの分析においては,現行の法人税に内在する二つの歪みである,リスク・テイキングに対する課税の中立性の問題と,資金調達手法に対する課税の中立性の問題を主として取り上げた。前者においては,リスク・テイキングに対する課税の中立性を確保するためには,リスク・テイキングの結果生じた欠損について,完全還付する方法と欠損の移転を認める方法を制度設計の観点から比較した。この比較は,平時における租税属性の売買の禁止という規律に新たな光を当てることになった。また、後者については,コーポレート・ファイナンスの分野における代表的なモデルである,静的トレードオフモデル及びMiller均衡,ペッキング・オーダー理論,エージェンシー理論それぞれと課税の関係を分析した。この分析では,課税上の歪みがコーポレート・ファイナンス上生じる問題を改善する機能を発揮する余地があることに注目した。しかし同時に,既存の法人税という形でそれを実施していくことには限界があることも指摘した。そして,これらの分析を企業再生税制の分析にも結び付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な研究成果を複数公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
公表した研究成果においては今後の課題として位置づけた事柄について引き続き研究を継続する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた出張を中止し,また研究成果の刊行作業に時間を要し,物品の購入を控えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究課題遂行に必要な物品の購入や出張のための費用に充てる。
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