2015 Fiscal Year Research-status Report
介護予防のための高齢者の皮膚脆弱性セルフアセスメントツールの開発と妥当性評価
Project/Area Number |
15K20927
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯坂 真司 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40709630)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 皮膚 / スキンケア / 質問紙開発 / 横断研究 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域在住高齢者に対し、①本人が日常的に使用できる皮膚脆弱性セルフアセスメントツールの開発と妥当性評価を目的とした。初年度は、皮膚脆弱性に関わる構成概念の明確化とセルフアセスメントツールの項目抽出、ツール案に対するプレテストを目的とした。文献検討には、MEDLINE, CINHALを用いて高齢者の皮膚に関する原著論文、症例報告、学会コンセンサス、本邦および海外の皮膚科教科書、診療ガイドライン等を収集し、高齢者に頻度の高い皮膚所見を系統的にレビューした。高齢者の皮膚に精通した皮膚科医と皮膚・排泄ケア認定看護師各1名にインタビューを実施し、全26項目2件法のツール案を作成した。次に、65歳以上の地域在住高齢者に対し当事者インタビューを行い、ツールのワーディングを修正した。 次に、ツール案に対する構成概念妥当性、基準関連妥当性を実施するための横断調査を実施した。対象者は地域の高齢者グループ活動の参加者であり、機縁法により募集した。実施期間は平成27年9月~11月であり、計87名が参加した(平均年齢74.3歳、女性83名)。本研究は、所属大学の倫理審査委員会の承認を得て実施された。参加者は、自身の皮膚を観察し、自記式のツール案に回答した。また、研究者1名が取得した皮膚写真に対して独立してツール案を評価した。高齢者自身による評価は実施可能であり、1割以上欠損が認められた項目はなかった。3項目はいずれの評価においても該当率が低かく、高齢者自己評価と研究者評価の一致率が十分ではない項目が多かった。さらに、参加者は客観的指標を用いた皮膚の計測を調査員より受けた。測定項目は前腕部の角質水分量、経皮水分喪失量、粘弾性、皮溝・皮丘画像、超音波検査による真皮厚み・輝度であった。研究者評価では多くの項目と皮膚粘弾性、皮膚の厚みが相関したが、高齢者自己評価では相関はしなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、セルフアセスメントツールの項目を抽出し、内容妥当性の担保を実施できた。 調査の参加人数が想定よりも多く募集でき、次年度予定していた併存妥当性調査の一部を前倒しして実施できた。皮膚に精通した専門家が評価した場合、ツール案の項目自体の併存妥当性があると考えられるが、高齢者の自己評価の妥当性が十分ではなく、回答方法に改善の余地があることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られたプレテストの結果に基づき、該当率の低い項目を削除し、ツールのワーディングやレイアウト、デザインを修正する。特に、該当する皮膚状態の写真を説明文と併記する。修正したセルフアセスメントツール構成概念妥当性と客観的皮膚計測値に対する基準関連妥当性を評価する。対象は地域在住高齢者100名とし、皮膚状態にばらつきがでるよう季節や地域を変えて、複数回調査する。客観的皮膚計測項目は前年度と同様とし、ツール得点との相関を分析する。また、ツール得点に対し、因子分析を実施し、構成概念妥当性の検証と皮膚の異常所見や疾患を基準としたROC曲線解析を実施し、セルフアセスメントツールのカットオフ値を設定する。 また、妥当性が確保されたセルフアセスメントツール得点と、皮膚脆弱性に関わる生活習慣、健康・介護予防の関心との関連を評価する。具体的には、清潔動作などの皮膚に関する行動頻度(入浴や清潔、保湿剤使用、日光暴露・保護)を皮膚脆弱性のリスク要因として評価し、予防的介入の方向性を見出す。また、フレイル(虚弱)の状態、介護予防事業への参加経験などを調査し、皮膚やスキンケア習慣が健康状態や予防行動を反映する指標となりうるかを検討する。
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Causes of Carryover |
測定機器の一部の価格変更に伴い、購入からレンタルに調達方法を変更したため、予定経費よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ツールの修正のための調査が新たに必要となったため、今年度の繰り越し分を質問紙作成、調査費用(人件費など)に充てる。
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Research Products
(7 results)