2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K20929
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 敏行 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60451887)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質 / 量子化学 / 分子軌道計算 / 波動関数 / 自動計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質のモデリングおよびカノニカル分子軌道計算エンジンの高速化など、タンパク質電子状態計算に関する計算プロセスの自動化に関する基盤研究を行った。 タンパク質モデリングの自動化の高精度化として、欠損した水素原子の付加ならびに末端処理、および構造緩和の作業を自動化するプログラムの開発・改良を行った。構造緩和の手法は分子力学法を用いた。力場パラメータが用意されていないヘテロ分子に関しては、半経験的分子軌道法により自動的にパラメータを算出することにより構造緩和を行った。 また、カノニカル分子軌道計算エンジンの高速化を目的として、グリッドフリー交換相関計算法の改良を行った。グリッドフリー法は行列演算のみで解析的に交換相関項を算出することができるため、分散メモリ型の並列計算機に適した計算方法である。しかし、グリッドフリー法による交換相関項計算はグリッド法に比べて高精度化が難しく、用いられていなかった。そこでグリッドフリー法を精査し、途中計算で利用する密度の表現行列を高精度化することによって、劇的に計算精度を向上させることができることを見出した。密度の表現行列にのみ専用の基底関数セットを用意することで、既存の密度汎関数計算の計算コストは変えずに交換相関項を高精度化することができた。また、核座標微分計算においても基底関数セットの線形従属性を適切にカットすることで、これまで不得意であったグリッドフリー法における微分計算を改良することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質のモデリングおよび電子状態計算に関する計算プロセスの自動化に関する基盤研究として、自動処理のベースとなるスクリプトを作成した。開発言語としてPythonを使用することで、開発期間を短縮するとともに、計算実行時間の短縮が図れる。Pythonのログ出力モジュールを利用することで、計算経過ならびにデバッグ情報を階層的に出力できるようになった。電子状態計算から得られた局在化軌道の計算などPythonでも計算時間のかかる部分に関しては、C++言語による開発を随時行っており、さらに並列化ならびにアクセラレータを使用することで計算時間の短縮を図っている。 タンパク質は巨大分子であるため、分子力学法を用いた構造最適化によってモデリングを行うことが現実的である。しかし分子力学法の力場パラメータは一般的な分子構造用に用意されているため、タンパク質の特異的な構造には適していない。量子化学的なモデリングが部分的にでも適用するために、ProteinDFにグリッドフリー法によるエネルギー勾配計算エンジンならびに構造最適化アルゴリズムを導入した。 なお、開発ソースはインターネット上に公開している。
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Strategy for Future Research Activity |
量子化学計算結果を電子状態データベースとして登録、利用する仕組みに関する基盤研究を行う。 まず、タンパク質波動関数データベースの設計・開発を行う。100残基クラスのタンパク質量子化学計算からは1GB以上のデータが作成され、またこの波動関数データから様々な物理量が計算・蓄積できるため、大規模データを蓄積・検索・解析できるデータベースの設計・開発を行う。 また、作成したタンパク質波動関数データベースへの登録する波動関数データの作成・追加・更新を順次行う。これら開発したツールおよびプログラムはインターネット上に公開し、また得られた知見をまとめ成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、まだ初年度で計算データならびにデータベース登録に必要なデータが少なく、想定よりディスク装置の需要が少なかったことが考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として、計算を効率的に進め、計算済みデータ量が増加することによってそれを蓄積するためのディスク装置の購入、ならびに研究成果発表のための学会参加費等に使用することを計画している。
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Research Products
(7 results)