2017 Fiscal Year Research-status Report
同性婚の社会学―親密な関係性を全体社会に位置づける現代的プロジェクトの研究
Project/Area Number |
15K20932
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森山 至貴 早稲田大学, 文学学術院, 専任講師 (50745510)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 同性婚 / 同性パートナーシップ / ネオリベラリズム / 新しいホモノーマティヴィティ / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、いくつかの自治体(都市部に集中している)で採用されている同性パートナーシップ制度と、ネオリベラリズムの結びつきに関して重点的に検討をおこなった。結果として、同性パートナーシップを推進する論調が抱える負の側面についての考察が主要な研究上の課題となった。その際、鍵概念として「新しいホモノーマティヴィティ」(Duggan)を考察の主要テーマとした。 結果として、本年中の業績には、同性愛者のみにとってのイシューとしてだけではなく、他異性愛主義的な社会にとっての同性婚・同性パートナーシップという切り口によるものが大部分となった。 具体的には、「日本のゲイは「普通の存在」になったのか」(『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房所収)という論文を執筆した。 また、同性愛者のライフスタイルや社会運動を、同性愛者に限らないさまざまなセクシュアルマイノリティのライフスタイルや社会運動の文脈に置き直すために、クィア・スタディーズの視座に関する検討をおこなった。具体的には「「新しさ」の罠にはまらないために」『現代思想』2018年4月号所収)。 本研究課題の方法論的側面に関する作業として、研究者自身の採用する方法であるインタビューについても、理論的検討をおこなった(「居場所がしんどい、現場が怖い」『現代思想』2017年11月号所収)。
本年度は、研究のアウトリーチ活動として、各種媒体へのコラムの執筆、講演などもおこなった。これらの機会における聴衆の反応は、フィードバックとしてとても有意義なものであり、今後の研究に活かしていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、今年度は同性婚・同性パートナーシップをめぐる日本の各自治体の動きが、ネオリベラリズムや「新しいホモノーマティヴィティ」と呼ばれる動きと関連していることを重点的に研究しました。結果、同性婚をめぐる日本社会のアジェンダ形成の負の側面について、一定程度のまとまった知見を得ることができた。 他方、諸外国の同性婚・同性パートナーシップ制度との比較については部分的な検討にとどまった。とりわけ、日本国内の自治体のパートナーシップ制度は、先行事例の問題をクリアする形でより先進的なものが次々と成立しているのであり、この点に関して諸外国の制度との比較検討が次の課題として明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
同性婚・同性パートナーシップをめぐる日本社会の論調は急速に変化しており、本年度の研究で導かれたそのネオリベラリズムへの傾斜という負の側面を踏まえつつ、この変化について一定程度のまとまった記述を本研究の終着地点として執筆する必要がある。 また、ここまでの研究で不足していた、制度の具体的な条文や運用についての検討を、最終年度には重点的におこなう予定である。そのことにより、社会規範と具体的な制度との交錯点に同性婚をめぐる現状を記述することが可能になる。 2018年度は本課題の最終年度にあたり、本研究のまとめとしてまとまった論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
研究遂行に必要な図書を購入するには不足したため、次年度に繰越の上当該書籍を購入する予定である。
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Research Products
(4 results)