2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Politics of Compromise: Canadian Federal Politics of the Early to Mid-Twentieth Century
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15K20937
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
高野 麻衣子 共立女子大学, 国際学部, 准教授 (10745673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域主義 / 国家統合 / 妥協 / 包摂 / 多数決型民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、以下の内容に取り組み、本研究課題の取りまとめを終えた。 本研究課題が検討対象としたW・L・M・キング(自由党)、ルイ・サンローラン(自由党)、ジョン・ディーフェンベーカー(進歩保守党)の各政権期に、彼らの民族的出自、多数派政権・少数派政権の別、所属政党の違いを超えて、妥協的な利害調整、すなわち特定のイデオロギーに収斂させることなく、多様な利益間での妥協を見出す政治が展開されていた点を通時的に説明した。国内の地域的・民族的多様性との向き合い方という意味での国家統合観は、キング、サンローランとディーフェンベーカーとの間で異なっていた。しかし、多数決による最終的な政策決定に至るまでの過程において、例えば、連邦・州間会議(Federal-Provincial Conference)を積極的に活用しながら、各地域や民族の政治的孤立を回避する妥協的な利害調整がなされてきたことを説明した。 また、19世紀のイギリス植民地時代のカナダにおいて登場した、異なる利益の「包摂(“inclusion”)」という考え方は、19世紀半ばの連邦結成以降のカナダ政治を特徴づけた、政党と内閣における地域的・民族的利害の代表という政治のあり方に通ずる点を、各首相の政党・政府観と国家統合観との関係に重点を置きながら検討し明らかにした。 以上を総括し、多元的な社会における安定的な統治について、アレンド・レイプハルトの理論に修正を示した。戦時期や恐慌期を除く平時の20世紀初頭から半ばまでのカナダ連邦政治において、政府・政党次元での多数決型民主主義という制度上の見かけのメカニズムの内側で、妥協的な利害調整が自律的に展開されてきたという研究結果を導いた。
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