2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20944
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊與田 英輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50725851)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 厳密対角化 / エンタングルメント / 固有状態熱化仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は非平衡状態からの熱化に関する理論的な考察を行い、それを踏まえて主に量子ドットの制御を想定した数値計算を行った。 孤立量子系は非平衡状態からユニタリ時間発展によって熱化し得るが、この十分条件として固有状態熱化仮説(Eigenstate Thermalization Hypothesis; ETH)が注目を集めている。ETHは量子多体系のエネルギー固有状態が熱的な性質を持つというものであるが、幾つかの一般的な前提の元で格子上の量子多体系においてETHを弱めたものを証明した。量子系の状態を制御して望んだ状態を作るためには熱的な状態に緩和するのはむしろ都合が悪い場合があると考えられ、制御を行う上ではこのETHが成り立たない条件が参考になると考えられる。もしくは緩和時間が長い過程が重要になると考えられる。 量子ドットや一次元の格子系を想定し、いくつかの簡単な系で厳密対角化による数値計算を行い、測定とその後のユニタリなダイナミクスを中心に調べた。局所的な物理量のダイナミクスに加えて、エンタングルメントの指標であるコンカレンスや相互情報量を計算した。熱化の文脈において保存量やエンタングルメントが熱化を阻害し得ることを参考にして、熱化測定後のダイナミクスが遅くなるような状況の実現を期待した計算を行ったが、これまで計算した範囲内では期待したようなダイナミクスは得られていない。セットアップが簡単すぎるもしくは小さすぎるのが問題ではないかと考えている。 この問題点を解決するためには、前年度に議論していた非ユニタリのグリーン関数の近似を行うか、より大きな系での数値計算が必要だと考えられる。数値計算に関しては、より大きな系を扱えるようにするためにKrylov部分空間法を用いるプログラムを準備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
量子多体系の緩和や熱化に関する一般的な知見(弱いETHなど)が得られたのは進展ではあるが、制御の観点からは間接的な利点しかないと考えられる。また、これまでに得られた数値計算結果は期待した結果ではないが、計算の態勢が整い、具体的な結果を見ることができているのは進展だと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
系ごとに個別の詳細に立ち入らず、一般的に非ユニタリのグリーン関数のや非ユニタリの有効ハミルトニアンの観点から議論する。特に、最近、測定が弱い極限での多体系への測定の反作用が議論されるようになっているため、それらの研究との関係を意識しながら研究を進める。また、引き続き随時数値計算を行い、有限サイズ効果を取り除くためにより大きな系を扱う。
|
Causes of Carryover |
数値計算の規模が大きくなってきたので、中型の計算機を購入するため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
中型の計算機を購入する予定である。
|