2015 Fiscal Year Research-status Report
non-stop mRNAの品質管理機構およびその生理的意義の解明
Project/Area Number |
15K20947
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 芳史 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (80734540)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 切断型mRNA / リボソームリサイクリング / mRNA品質管理機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高等真核生物におけるnonstop mRNA decay (NSD)分子機構の全容解明と共に、NSD の生理的意義の解明を目的とし、初年度となる本年度は、(1)NSDの分子機構解明、(2)RNAシークエンスによるNSDの内在性標的RNAの同定を目的とし研究を行った。(1)高等真核生物におけるNSD分子機構に関し、ショウジョウバエ細胞を用いて詳細な解析を行った。酵母を用いた研究成果からNSDの主要関連因子としてリボソーム解離因子Pelota / Hbs1が報告されている。これに対しショウジョウバエにおけるNSDではPelota、Hbs1の関与は示されておらず、その分子機構は不明のままであった。しかし今回Pelota/Hbs1を同時にノックダウンすることでnonstop mRNAが安定化することを見いだした。さらに、この条件においてnonstop mRNAは高度にリボソームが結合した状態で維持されていることを確認した。これらの発見により高等真核生物におけるNSDにおいてもPelota/Hba1によるリボソームの解離が重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。さらに、ショウジョウバエ細胞では酵母よりもPelota/Hbs1によるリボソーム解離段階がNSD開始のトリガーとしてより重要になっていることを示す結果を得ている。また、付け加えてNSDと密接に関連している切断型nonstop mRNA由来の異常タンパク質の分解機構についても解析を行い、酵母で提唱されているモデルが保存されていることを確認している。(2)RNAシークエンスによるNSDの内在性標的RNAの同定に関し、(1)で同定したNSDの破綻条件を参考に予備的な実験を行ったが現在のところ内在性標的RNAの同定に至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)NSDの分子機構解明、(2)RNAシークエンスによるNSDの内在性標的RNAの同定を目的とし検討と行った。中でも(1) NSDの分子機構解明に関して解析が予想以上に進み、これまで酵母を用いた解析から提唱されていたモデルとは異なる点が多数明らかになってきた。特に切断型nonstop mRNAの分解機構のPelota/Hbs1依存的なリボソームの解離が不可欠なステップとなっていること、主要なRNA分解酵素の切断型nonstop mRNAの分解への関与が従来考えられていたモデルでは説明出来ないことなどが重要である。また、NSDの生理的意義解明を目的とした切断型nonstop mRNA由来の異常タンパク質の分解機構については酵母モデルと同じ挙動を確認した。しかし、Pelota/Hbs1のノックダウンにより細胞全体のタンパク質の翻訳効率が著しく低下してしまうためPelota/Hbs1ノックダウン時の異常タンパク質を検出することが困難である等の問題がある。(2)NSDの内在性標的RNAの探索に関し、Total RNAを用いたRNAシークエンスでは内在性標的RNAを同定することは困難であった。これは完全長のmRNAに対し切断型mRNAの量が微量であるためと考えられる。このことから実験のスケールの大規模化が必要である。また内在性mRNAをショ糖密度勾配遠心法により精製した際、mRNAが非特異的に分解されることを確認している。切断型nonstop reporter mRNAや比較的短いmRNAでは特に問題にならないことから、この非特異的分解はmRNAの長さ依存的な分解であると推測される。また現行のショ糖密度勾配遠心法では後の操作の阻害物質となる試薬を含むため改めて検討する必要がある。これらの理由によりNSDの生理的意義解明に関し当初の計画から遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である(A)NSD機構の全容解明と(B)その生理的意義の解明に関し、(A)NSD機構の全容解明に関して、本年度の研究が予想以上に進み、より詳細に検討することで従来モデルでは十分に考慮されていなかった点の重要性を明らかに出来ると考えている。このことから、NSD機構の全容解明に関して当初の予定を延長し、より入念に検討していく予定である。具体的にはPelota/Hbs1によるリボソームの解離段階、Ski-exosome複合体によるmRNA 3’-5’分解、Xrn1によるmRNA 5’-3’分解の切断型nonstop mRNA分解への寄与を検討し、一連の反応が連鎖的な反応であるのかリダンダントな反応であるのかを明らかにする予定である。(B) NSDの生理的意義の解明に関し、現行の計画では実験の長期化、大規模化が避けられない。そこで計画を変更し、NSDの標的であると予想される内在性RNAを直接解析する。特にこれまでの成果として、他のRNA分解酵素に影響を及ばすこと無くPelota/Hbs1のノックダウンのみで切断型nonstop mRNAが安定化することを見いだしており、候補の切断型mRNAがNSDの基質であるかどうかは容易に判別することが出来る。また候補の切断型mRNAとしては、分子内切断が報告されているRNA分解機構に着目する。mRNAの分子内切断はsiRNAやナンセンス変異含有mRNAの分解機構(NMD)など一般的にもよく知られ、その生理的意義がよく理解されているRNA分解機構で観察される。このことからこれらのRNA分解機構で生じる5’ mRNA分解中間産物がNSDの基質であるかを中心に検討する予定である。これによって、NSDの内在性標的の大きなクラスターを明らかにでき、NSDの生理的意義を類推することが容易になると考えられる。
|