2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20953
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠松 秀輔 東京大学, 物性研究所, 助教 (60639160)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 誘電体 / 強誘電体 / 負のキャパシタンス / 分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で利用するバイアス印加シミュレーション手法である軌道分離法の拡張を行い、従来から可能であったバイアス電圧の制御に加えて、自由電荷量の計算・制御を可能にし、開回路状態の計算を行うことができるようになった。
強誘電体BaTiO3・常誘電体SrTiO3の2層薄膜をSrRuO3金属で挟んだキャパシタ構造に対して、軌道分離法を使ってバイアス電圧を印加した第一原理計算を行い、分極ドメイン構造の変化やキャパシタンスの評価を行った。電圧がかかっていないときは界面垂直方向に並んだ縞状の180°ドメイン構造が安定であるが、電圧を加えることで分極ドメイン壁が消失し、単一ドメイン構造が実現することが分かった。また、ドメイン壁の消失に伴って、キャパシタンスの増幅が発現することが分かった。その結果、常誘電体だけのキャパシタとくらべて強誘電体・常誘電体2層キャパシタの方がキャパシタンスが大きくなることが計算によって予測され、強誘電体薄膜によってキャパシタンスの増幅が見られること、言い換えれば強誘電体薄膜が「負のキャパシタンス」を有することを明らかにした。
また、当初の計画には無かったが、強誘電性およびイオン伝導性の両方を有するとされる興味深い物質であるヒドロキシアパタイトについても研究を開始した。この物質は永久分極を有するエレクトレット材料の候補として研究されているが、分極の固定に寄与するメカニズムについては十分明らかになっていない。今年度はバルク中の分極メカニズムについて検討を行い、OH-イオンの回転による分極反転、OH-イオンの空孔を介したホッピング、H+イオンの空孔を介したホッピングについて、活性化エネルギーの計算を行った。いずれも1.5 eV未満であり、分極処理条件下で十分起こりうる素過程であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軌道分離法の拡張や負のキャパシタンスの発現機構についてのシミュレーションを進めることができ、また、当初想定していなかった新たな材料系(ヒドロキシアパタイト基エレクトレット材料)への取り組みを開始した。一方、大規模計算に向けた軌道分離法のOpenMXへの実装などは進んでおらず、その必要性も含めて改めて次年度に検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、界面の欠陥分布の計算と、界面に欠陥がある場合の誘電応答の計算を行う。また、ヒドロキシアパタイトについては、OH回転、OH拡散、H拡散が全体の分極にどのように寄与するかを明らかにするため、動的モンテカルロ法によるシミュレーション実施の検討を行う。
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Causes of Carryover |
国内会議参加について検討したところ、想定より近場の会議に参加することになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内会議参加およびハードディスクなどの必要備品の購入に使用する計画である。
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