2016 Fiscal Year Research-status Report
イリノイ州とシカゴ市におけるマイノリティ児童のリテラシー教育に関する教授学的研究
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15K20978
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
村山 拓 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (50609641)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 米国 / リテラシー / 教育 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イリノイ州およびシカゴ市でのカリキュラム開発の理論研究、事例研究を行うため、現地での資料調査および実地調査とその分析を行う目的で計画されている。 第二年度は、マイノリティ児童に対するリテラシー教育に関するカリキュラムのガイド等の資料収集および調査を行った。イリノイ州とシカゴ市のカリキュラム・ガイドの言語領域や言語、読みのカリキュラムにおける学習単元、教材の配列、内容構成を確認し、それぞれについて、どのような指導法が推奨されているのか、学習課題の難易度や、学習者の課題はどのような水準に設定されているのか、教師の活動として、どのような教授行為が示されているのかを調べ、授業実践で求められる教授-学習活動の内容を明らかにすべく、資料の収集及び分析を行った。 また、あわせて健康管理等に関するリテラシー(ヘルス・リテラシー)教育の動向に注目し、学校教育においてメンタルヘルスを含むヘルス・リテラシー教育についての議論の展開や動向の検討を行った。 分析結果の一部は、村山拓(2017)米国における特別教育領域の教師の専門性をめぐる検討 ―1970 年前後に議論された「読みの問題」と「特別教育の役割の変化」に注目して― 東京学芸大学紀要総合教育科学系Ⅱ第 68 集、Taku Murayama (2016) Key Issues of Health Literacy: A Literature Review" The Journal of East Asian Educational Research, Issue No.2(査読あり)にて公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析成果の公表を含め、概ね順調に進んでいると考えられる。具体的には、イリノイ・プランおよびシカゴ・ガイドと、関連する特殊教育、特別支援教育関連の資料、記事や両カリキュラム・ガイドの制定にかかわる二次資料、論稿等を収集し、言説分析や社会的リテラシー概念を援用しながら、分析を進めることができている。現時点では、シカゴ公立学校区を中心として、知的障害、学習遅滞児に対する言語(特に「読み」)の指導に注目し、選択された教材の特徴、内容構成、指導する教師の専門性に関する議論を検討し、一部を論文化した。また、言語指導に支援を必要とする子どもへの初期アルファベットの指導について、教師に対してどのような指導法が推奨されているのか、学習課題の難易度や、学習者の課題はどのような水準に設定されているのか、教師の活動としてどのような教授行為が示されているのかを調べ、授業実践で求められる教授-学習活動の内容を明らかにすべく、資料の収集及び分析を行っている。また、特別な読みの指導を行う学習形態(小集団、特別クラスなど)についても検討を進めている。また、ヘルス・リテラシーの教育の動向を調べることにより、単なる読み書きのレベルでのリテラシ―ではなく、社会生活を行ううえで重要とされるリテラシーの教育や内容の整理が行われていることを確認することが出来ており、引き続きの検討課題である。 当初の計画と異なる点としては、調査時期の変更が必要になったこと、調査機関として障害児協議会(Council for Exceptional Children)等への変更が挙げられるが、研究成果の点では、第二年度に予定していた国際査読誌への投稿、掲載も含めておおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく次の二点に基づいて研究を進めたいと考えている。 第一に、イリノイ州での関係機関における第二次資料調査および実地調査である。イリノイ州シカゴ市および、州都スプリングフィールド市での資料調査を行う(二週間程度)。シカゴ市では関連資料の調査と同時に、実践校、実践機関への訪問調査を予定している。スプリングフィールド市での特殊教育、特別支援教育関連のカリキュラムの事例の収集も着手しており、その内容や題材、単元構成の分析を行う。 第二に、国際学会を含めた関連学会での報告である。本研究課題に深く関連する研究組織である関連学会のいずれかに参加し(日程が確定し次第、勤務先の校務日程と調整の上、参加学会を決定)、分析の経過の中間報告を行う。また、その機会を利用して、研究課題に関連する専門家との面会の機会を作り、研究課題遂行のためのより効果的なアプローチやリソースについての助言を得たいと考えている。 また、第一、第二年度の調査・研究を通して、新聞記事、雑誌等(教師向け、それ以外含めて)の学術雑誌や公文書以外のメディアによる情報収集、資料収集の必要性を感じている。カルチュラル・スタディーズなどの成果にも学びながら、課題により具体的に迫るための史資料へのアクセスと、その活用の可能性も検討しながら分析を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
勤務校の業務スケジュールの関係で、渡航による調査を次年度に後ろ倒ししたため、旅費の一部が未使用となり、次年度使用額が生じた。また、研究成果公表のための英文校正の謝金が、当初見込みよりも高額となり、当該年度に使用可能な額を大幅に超える可能性が生じたため、自費にて支出することとなり、次年度使用額が生じた。 あわせて、関連資料の収集で、海外大学図書館からの資料の入手につき、先方の指定するバウチャー購入・送付手続を、経理処理の都合により次年度に行い、費用を次年度使用額から支出することとなった。バウチャー購入に充てる予定の費用が次年度使用額に加算された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じた理由の中で、まず海外図書館へ送付するバウチャーの購入を行う。為替レートによる変動を鑑み、この支出額が確定してから、今年度使用分とあわせて英文校正の謝金、調査及び学会発表の旅費に充当したいと考えている。
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Research Products
(5 results)