2015 Fiscal Year Research-status Report
スポーツソナーリング:音情報の時間的・空間的ズレが運動パフォーマンスに及ぼす影響
Project/Area Number |
15K20979
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩見 雅人 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50634698)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 迷聴器 / 音声遅延フィードバック / 聴覚情報処理能力 / 運動パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
球技スポーツの熟練者は,プレーヤーやボールが発する音から位置や動きを正確に把握していると考えられる.また,聴覚は全方位性(全方位から刺激を知覚できる特性)を有しているため,スポーツにおける音情報の利用は,パフォーマンスを左右する重要なスキル要素である.そこで本研究では,熟練者の『音情報処理スキル』の特徴を明らかにし,スポーツパフォーマンス向上に資する音情報の役割を検証することを目的とする.目標を達成するために,音知覚に空間的・時間的“ズレ”を生じさせる装置を開発し,音情報が競技熟練者や初心者のパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにする.本課題の実施において,周囲音を左右逆転させる「迷聴(pseudophone)」機能,さらには周囲音を遅れて聞こえるようにする「音声遅延フィードバック(DAF:Delayed auditory feedback)」の機能を有するヘッドホンの開発が重要な位置を占めている. 本年度では,この「迷聴」および「音声遅延フィードバック」の両方の機能を持つヘッドホン装置を設計・製作し,完成させることができた.このヘッドホン装置は,周囲音を左右逆転させることができ,0ms~1,000msの音声遅延を付加することが可能である.また,装置は電池式のため本体部分は携帯可能であり,動作課題においてもパフォーマンスを阻害することのない設計となっている.この装置によって,周囲音を左右逆転させる「空間知覚不一致課題」および音声遅延を付加する「タイミング知覚不一致課題」の実施が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度では,「迷聴」および「音声遅延フィードバック」の両方の機能を持つヘッドホン装置を設計・製作し,完成させることができた.しかし,その構想,設計,そして製作までに時間を要した.特に,動作パフォーマンスを阻害しないよう本体部分を電池式かつコンパクト化する必要があり,設計段階で多くの試行が必要であった.結果として,プロトタイプではあるが十分な機能を有する装置を完成させることができたので,次年度以降では「空間知覚不一致課題」および「タイミング知覚不一致課題」などを実施し,実用性を検証する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
完成したヘッドホンを装着し,実際に「空間知覚不一致課題」および「タイミング知覚不一致課題」を実施する.動作課題中に付加する音声情報の変化について,いくつかの「迷聴」および「音声遅延フィードバック」の組み合わせを試行し,最適な音声条件を選定する.選定した音声条件をもとに,「視覚と聴覚による定位のズレ」や「視覚と聴覚による時間のズレ」を加え,動作パフォーマンスに音声情報の変化が及ぼす影響を明らかにしてく.得られた結果から,音声情報および運動パフォーマンスの関係,そして聴覚情報処理能力について検討を進めていく.また,ヘッドホン装置についても適宜改良を加え,重量やサイズなどをより軽量かつコンパクト化できるようマイナーチェンジしていく.
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Causes of Carryover |
旅費に関して,都合により当初参加を予定していた学会大会に参加できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に参加する学会大会を増やし,研究発表および情報収集の場を増やす予定である.
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