2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K20983
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
平 絵美 (京都絵美) 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40633441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 和様 / 仏画 / 石窟壁画 / 絹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまで美術史の分野で議論の続いている「和様」という言説の曖昧さについて、主に空間性の表出方法に力点を置き、実技を伴った検証を行うことによって日本仏画の特質を再定義することを目的としている。 初年度にあたる平成27年度は作品の熟覧を中心に調査研究を進めた。特に中国のキジル石窟、クムトラ石窟、敦煌西千仏洞、敦煌莫高窟、敦煌楡林窟において特別窟を多数含めた石窟壁画を集中的に熟覧できたことは大きな成果であった。南北朝から唐、吐蕃、五代、宋、西夏、元の各年代に描かれた石窟を編年的に通覧し、技法や表現を発展的に捉えるとともに、民族間での志向性の振れ幅、あるいはクチャと敦煌での地域差について等、多くの知見を得た。日本の仏画において請来画の「和様化」がどのような美的感覚に立脚して行われたのかという本研究課題に照らし、そのほか、これまでに法隆寺所蔵孔雀明王像、永保寺所蔵千手観音像についても熟覧調査を行い、国内の展覧会等で研究に関連する作品が公開される際に見学するなど情報の蓄積に努めた。本研究では絵画実技の立場から素材、技法、視覚効果等の多角的な検証をおこなうことを課題としており、基底材や色材についての調査、サンプル実験を並行しておこなっている。また、本研究に密接に関わる個別的な事例として、川崎市内で新たに確認された地蔵菩薩画像について、図像の酷似する別本との関連を述べつつ請来画の受容と伝播の一端を研究論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題として定めていた中国における現地調査を実行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間の研究計画の第2年次にあたり、引き続き熟覧調査、関連する画像情報の収集、整理、ならびにサンプルの製作等、計画に則して研究を進展させるようにする。すでに確定している年度計画として、西大寺所蔵十二天画像のうち6幅の調査を進める。2年次は特に過去に撮影されたフィルムを利用して仏画資料の蓄積と分析を集中して行う予定である。初年度は発表の機会の少なかったことが反省すべき課題であり、分野を超えた研究者との議論やワークショップの開催を目指している。
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Causes of Carryover |
初年度に行う予定であった調査が関係機関との調整の結果、2年次に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
近畿地方での調査に使用する
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Research Products
(1 results)