2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K20983
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
京都 絵美 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (40633441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 絵画 / 技法材料 / 和様化 / 仏画 / 絹本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は絵画の「和様化」という言説について、絹本仏画を中心に技法・材料と装飾、空間表現の関連性からその具体像を明らかにすることを目的としている。その方法として、基底材(絹)と色料の調査研究、作品調査、画像資料の収集・整理、サンプル実験制作を進めている。 今年度は特に基底材と接着剤(膠)について調査と実験制作を行った。接着剤については昨年度から日本学術振興会特別研究員宇高健太郎氏の協力を得て、牛生皮、鹿角を原料とした膠を製作している。基底材については岐阜県各務原市苅周株式会社に取材し、現代の絹織がどのような工程で行われているかを知ることで、古代の絹との質の差、またそれが作画にどう影響するか考察した。また、特別に再現製作された古代絹を用いて、北宋・米フツ;『画史』、南宋・趙希鵠『洞天清録集』 に記述される絹の素地加工を再現した。そのほか奈良国立博物館特別展「源信」、台湾故宮博物院特別展「國寶的形成ー書画精華特展」などを観覧して大きな知見を得た。 研究発表としては6月24日共立女子大学において「絹本仏画の技法と表現」を科研基盤研究C「日本絵画の復元研究における復元根拠の再検討」との共催ワークショップ<復元研究と技法材料> のなかで発表した。また、6月26日川崎市教育委員会文化財ボランティア養成講座において「技法・材料からみた日本絵画」と題した講演で研究の一端を示した。 現在は絵画の指向性を示すものとして絹本着色画の技法的展開に着目している。本研究課題の調査対象となる平安時代後期から鎌倉時代になると北宋後期、南宋の着色画とは制作工程、特に彩色の方法が大きく異なってくるためそれに呼応して自ずと表面上にあらわれる装飾などの細部の描写、仕上げ段階の表現にも差異が生じている。次年度、引き続き基底材の加工方法の検討とその作画実験を行い論文等で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希望していた調査が次年度行われることになり、画像収集も諸般の事情により進捗していないが、その分の予算を実験や取材に充当し研究全体としてはおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる次年度はこれまでの調査、実験制作から得た知見を取りまとめ、複数回の発表と論文執筆を予定している。 調査については、「孔雀明王像」(仁和寺)等の熟覧および撮影調査を実施するほか、引き続き画像の収集、整理をおこなう計画である。 今後は仏教絵画以外の着色画にも範囲を広げ、特に『延喜式』等の記録や中国の画論から基底材や色料等の作画に関する記述を抽出して、再現実験を行うことで文献資料と現存作品の表現との関連について考察し、絹本絵画の技法的展開について研究を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
作品調査の予定に変更が生じた分を、実験制作のための物品や謝金、海外での展覧会参観に充当したため
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