2017 Fiscal Year Research-status Report
液晶/高分子界面相互作用の理解に基づくラビングフリー液晶性ポリイミド配向膜の創製
Project/Area Number |
15K20992
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石毛 亮平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20625264)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ポリアミド酸エステル / リオトロピック液晶 / 全芳香族ポリイミド / せん断流動配向 / 広角X線回折 / 偏光赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,PMDAとTFDB骨格を有するポリアミド酸エステルPM-n(nはアルキル側鎖炭素数)のNMP濃厚溶液(>40~50wt%)が形成するリオトロピック液晶を基盤として,せん断印加により配向処理した液晶溶液の加熱イミド化過程における分子鎖配向挙動を時分割X線回折法(SR-WAXD),フーリエ変換偏光赤外吸収分光法(p-FTIR)に基づいて詳細な解析を実施した.SR-WAXD測定は,高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)のPFにて実施した.本年度の検討においては窓材として厚み5 μmカプトン薄膜を適用することにより,これまで困難であった配向液晶相のSR-WAXD測定に成功した(前年度までの検討では,配向したリオトロピック液晶を水に浸漬・固化した試料の構造解析を実施してきた).測定に用いた配向試料は,窓材であるカプトン膜上に液晶溶液をガラス棒でこすりつけることでせん断流動を印加して調製した(既存の溶融石英薄膜等は脆弱で適さない).その結果,長いアルキル側鎖を有するPM-n (nが8以上) が濃厚溶液状態で主鎖が層法線に平行に配列するスメクチック相 (主鎖型のサーモトロピック液晶性高分子で一般的な構造)を形成することが明らかとなった.さらに,SR-WAXDおよびp-FTIRから各々評価される一軸配向秩序度SWAXDとSIRは,液晶相で極めて良く一致し,液晶溶液が等方相を含まない均一相であることを実証した.さらに乾燥過程においては結晶化に伴いSIR > SWAXDとなり,配向度のより高い結晶相が固化した液晶相中に析出することが示唆された.また,基板を親水処理することによりせん断により誘起される配向は向上し,乾燥・熱イミド化過程の構造に関わらずS~0.9に達する高配向のポリイミド(PI)フィルムを調製できることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は,前年度の予備検討を基に時分割温度可変SR-WAXDによりPM-nのリオトロピック液晶の溶媒蒸発・イミド化過程における構造変化を再現性良く捉えることに成功し,これまで不明点の多かった液晶構造が明確になると共に極めて高配向のPIフィルム調製法が確立され,ほぼ当初の研究計画どおりに研究が進展した.特に,p-FTIRとSR-WAXDの比較から明らかとなった液晶相の均一性は,強い分子間相互作用が予期されるPM-n系においても,定性的には半剛直高分子濃厚溶液の熱力学理論から予測可能であることを示唆し,分子設計上も極めて有用な知見であった.
|
Strategy for Future Research Activity |
H30年度は,これまでの検討で得られた知見について精査・再現性を綿密に確認し,論文化を進めると共に,当初の目的であった配向高分子と液晶分子の界面における相互作用の解明を目指す.具体的には高配向のPI膜上に5CB等の低分子液晶を塗布し,数ミクロンの粒径のコロイド粒子をスペーサーとしてATR-IR測定を実施する.特に分子鎖配向のみならずイミド環面の配向と低分子液晶の配向の相関の比較評価を通じ,極性基の分子間相互作用を解明できると期待される.
|
Causes of Carryover |
理由 製作を見込んでいた顕微分光測定に必要となる回転ステージ(仰角制御)の開発が難航し,年度中に完成に至らなかったため. 使用計画 引き続き回転ステージの開発を進めると共に,スペクトル解析ソフトウェアの購入を見込んでいる.
|
Research Products
(5 results)