2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常に対する米胚乳・米糠タンパク質の有効性
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15K21004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
久保田 真敏 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (00595879)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 米胚乳タンパク質 / 米糠タンパク質 / 慢性腎臓病 / 骨・ミネラル代謝異常 / 糖尿病性腎症 / ZDFラット |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の合併症である糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患は,腎機能の低下によりミネラルや骨代謝の異常を引き起こすことが知られている。ミネラル代謝異常は血管の石灰化を引き起こし,心血管系疾患の原因となり死亡のリスクを増大させる一方,骨代謝の異常は骨折のリスクを増大させ寝たきりの原因となる。現在の糖尿病患者数の増大により糖尿病性腎症から慢性腎疾患に伴うミネラル・骨代謝異常(CKD-MBD)を発症する患者数が増大することが容易に推測され,その対策が今後極めて重要になると考えられる。そこで本研究では,米胚乳タンパク質(REP)および米糠タンパク質(RBP)の摂取がCKD-MBDに与える影響を検討している。 本研究ではCKD-MBDのモデル動物として,肥満2型糖尿病モデルZDFラットを用いることとした。慢性腎疾患により比較的早い時期から血中濃度が上昇することが知られ,血中リン濃度低下作用を持つFGF23がREP摂取により有意に低下することが示された。以上の結果より,REP摂取によりCKD-MBDの比較的初期病態でみられるミネラル代謝異常が抑制されることが示された。 骨重量や骨長には変化がみられなかったが,μCTを用いて骨の微細構造に対するREP摂取の影響を検討したところ,骨密度(BMD)の有意な低下がみられ,骨量(BV/TV)の有意な上昇がみられた。どちらのパラメータもREP摂取により健常ラットに近い値を示しており,CKD-MBDによる骨の微細構造の劣化を抑制している可能性が示された。また,糖尿病により血中濃度が低下する骨形成マーカーであるオステオカルシンは,REP摂取により有意に高値を示し,骨の合成が活発に行われている可能性が示された。以上の結果より,REPはCKD-MBDによる骨代謝の異常を抑制する機能を有していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は米胚乳タンパク質(REP)摂取が慢性腎疾患に伴うミネラル・骨代謝異常(CKD-MBD)に与える影響を検討しており,糖尿病および糖尿病性腎症に与える影響について,血中および尿中パラメータの計測および腎糸球体の形態学的な観察を行っており,糖尿病および糖尿病性腎症に対するREP摂取の有効性が明らかとなり,申請書の計画通り研究が進捗している。 さらにミネラル代謝異常に与える影響については,血中FGF23,副甲状腺ホルモン(PTH)濃度の測定,血中および尿中カルシウム,リン濃度の測定も完了し,CKD-MBDのミネラル代謝に対するREP摂取の有効性がほぼ当初の計画通り明らかになりつつある。一方,当初の計画にあったα-Klothoの検出のみ検出条件の検討にとどまっており,REP摂取がα-Klotho発現に与える影響についての検討が完了していない。 また,骨に与える影響については血中骨代謝マーカーの測定に始まり,骨重量,骨長の測定,μCTを用いた骨微細構造の測定まで完了しており,当初の計画通りCKD-MBDの骨代謝へのREP摂取の有効性が明らかになりつつある。 上述したようにα-Klothoの測定のみ当初の計画通り進捗していないが,当初平成28年度に開始する予定にしていた米糠タンパク質(RBP)を用いた動物試験を既に開始しており,研究全体としては当初の計画以上に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は当初の計画通り,米糠タンパク質(RBP)摂取がCKD-MBDに与える影響について,主に以下の3点について検討を行っていく。まず糖尿病および糖尿病性腎症に与える影響について,血糖値を始めとする血中パラメータおよび糖尿病性腎症の早期診断マーカーである尿中アルブミン排泄を始めとする尿中パラメータの測定を行い,さらに腎糸球体の形態学的な計測を行う。 次にCKD-MBDのミネラル代謝への影響について,血中のミネラル代謝調節ホルモンであるFGF23および副甲状腺ホルモン(PTH)の測定を行い,RBP摂取の有効性について検討する。さらに血中および尿中のカルシウム,リン濃度を測定し,カルシウム,リン代謝の変動についても評価し,カルシウム,リン恒常性に与える影響についても検討を行う。また,測定が完了していないα-Klotho発現の測定については,米胚乳タンパク質(REP)を摂取させたラットのサンプルと合わせて測定する。 最後にCKD-MBDの骨代謝への影響について,平成27年度の検討と同様に骨重量および骨長への影響を評価し,μCTを用いて骨微細構造へRBP摂取の影響を評価する。並行して,血中の骨形成マーカーであるオステオカルシン,骨吸収マーカーであるNTxの測定を行い骨代謝への影響を評価し,骨全般に対するRBPの有効性について証明する。 なお上記測定の具体的な手法については,平成27年度のREPを用いた検討と同様に行うこととし,測定手法に関する問題はないものと考えている。
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