2016 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫Early-stageの真皮・皮下組織構造と皮膚バリア機能の解明
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15K21020
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
臺 美佐子 金沢大学, 保健学系, 助教 (50614864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 早期リンパ浮腫 / 超音波画像診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的は、超音波画像診断装置で真皮・皮下組織のエコー画像を観察し、Early-stage(ES)に特徴的なエコー画像指標の明確化とした。 研究デザインは横断観察研究とし、リンパ浮腫評価管理を行う病院3 施設で、リンパ浮腫ES群を国際リンパ学会(ISL)分類I 期の者と定義し、浮腫症状が明 確なISL 分類II 期群、浮腫を有さない健康成人群との真皮・皮下組織構造を比較した。測定部位は肘窩下10 ㎝内側部に統一し、真皮観察は周波数20MHz、皮下組織は10MHz のエコーで画像を獲得した。指標はリンパ浮腫評価方法で代表的な真皮厚・真皮低輝度所見割合(LEP)・皮下組織厚とし、エコー画像を画像解析ソフトで算出した。分析は、ES群とISLII 期群は健肢、健康成人群は非利き手を基準とし左右肢の比を算出後、統計分析で3 群比較した。 乳がんに対する腋窩リンパ節郭清術歴を有する患者27 名のうち、ES群12 名24肢、ISLII 期群15 名30 肢、健康成人群16 名32 肢であった。エコー画像から得られた真皮厚・真皮LEP・皮下組織厚の左右比のうち、皮下組織厚比は、ES群が健康成人群より有意に大きく(p=0.001)、ISLII 期には有意差がなかった(p=0.367)。真皮厚及び真皮LEP は、ES群と健康成人群とに差がなく、ISLII 期群より有意に小さかった(p=0.036)。 ES群では、皮下組織厚の左右比が健康成人群より有意に大きく、周囲径や主観的症状の出現前に皮下組織構造に変化を及ぼすことが示唆された。さらに、ES群とISLII 期群とに有意差が見られず、早期の段階で皮下組織厚がISLII 期群と同様の厚さに至っている可能性を示す。皮下組織厚変化は組織間液貯留と考えられ、今後はエコー内部性状の解析も実施し、皮下組織変化の検証が必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は2点である。 まず、これまでの研究実績から、予測と異なる新しい発見があったことである。予測は、真皮に変化が生じエコー上で明らかな違いがあるとしており、真皮内の成分を検討する予定であった。しかしながら、エコー上で違いがあったのは皮下組織であるという新たな結果であり、この考察及び次のステップとして指標を検討することに時間を要している。 次に、育児休暇により約1年間のタイムラグが生じたことである。この間、考察・次ステップへの検討が滞った。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまでの研究結果で得た新たな発見について、専門家を集めてグループ討議を行う。皮下組織の変化を簡便・非侵襲的にとらえる指標を探索し、健康成人でのテストをした後、臨床評価を行う。 専門家のグループ討議では、東京大学、金沢大学、金沢医科大学、福井大学、ノッティンガム大学の浮腫専門研究者及び、国内複数施設のリンパ浮腫外来の医師・看護師よりスーパーバイズを得る。討議結果をまとめたのち、新指標のトライアルを行う。 新指標のトライアルは、健康成人10名を対象として、測定部位、測定時刻といった条件を選定する。 臨床評価は、ISL分類I期である早期リンパ浮腫患者10名、ISL分類II期リンパ浮腫患者10名に実施し、健康成人との3群比較を実施する。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇及び育児休暇取得により約10ヶ月間、研究を中断することとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由により補助事業期間の延長承認を受けたことにより、当初の実施計画に変更が生じた。次年度は変更後の実施計画に基づき、新指標物品準備、学会集会発表のための旅費と学会参加費、グループディスカッションのための渡航費、論文投稿のための英訳校正費・論文掲載費用を使用予定とする。
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Research Products
(2 results)