2016 Fiscal Year Research-status Report
水素移行反応を活用した木質バイオマスの脱酸素化と芳香族炭化水素への転換
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15K21038
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
嶋田 五百里 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (40708187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマス / 脱酸素 / 接触分解 / 水素移行反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、木質バイオマスを液化して得られるバイオクルードオイルを重質油と混合して接触分解を施すことにより効率的に脱酸素化し、芳香族炭化水素に転換することを目的としている。今年度(平成28年度)は、バイオクルードオイル中に含まれる可能性がある様々な含酸素官能基(エステル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、フェノール類など)に着目し、それぞれのモデル物質を重質油モデル物質と混合して接触分解反応試験を行うことで、脱酸素の可否や反応機構の解明に取り組んだ。エステルを原料に用いた実験では、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、アルコールを経由して完全脱酸素が進行することを確かめた。さらに、カルボン酸からケトンを経由する経路では脱炭酸による炭素損失が生じるのに対し、カルボン酸からアルデヒドやアルコールを経由する経路には水素移行反応が寄与することで炭素損失なく効率的な脱酸素化が達成できることを確かめた。また、グアイアコールと水素供与体(パラフィン、オレフィン、ナフテン)の混合接触分解実験では、グアイアコール中のメトキシ基が速やかに水として脱酸素されること、ヒドロキシ基の脱酸素化が遅いこと、水素供与体の種類によって脱酸素化の速度や選択性が変わること、などを確かめた。以上の結果から、接触分解を用いることで大部分の含酸素官能基からの脱酸素化が可能となる一方で、芳香族炭化水素の製造のためにはフェノール類の脱酸素化をさらに促進する必要があることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な含酸素化合物の接触分解反応について検討し、脱酸素反応経路や律速段階について明らかにすることができた。特にエステル類からの脱酸素反応に関しては国際会議と論文で発表することができた。また、芳香族炭化水素の製造に向けてはフェノール類からの脱酸素化が最も困難であることを確かめられた。さらに、従来の反応試験及び生成物分析だけでなく、利用を計画していたオンラインガスクロマトグラフィー付パルス反応器や拡散反射赤外分光測定(DRIFTS)についても装置作製がおおよそ完了し、反応中間体や反応場の状態に関する有効な情報を獲得できつつある。以上を勘案し、本研究は概ね順調に進められていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な含酸素化合物の接触分解における脱酸素化に関して、これまでに得られた知見を基に反応モデルを作成し、速度論的解析を行う。さらに、触媒物性の中で脱酸素反応に影響するものを抽出し、反応機構との関係を明らかにするとともに高活性な触媒調製に取り組む。これまでに、接触分解用触媒の中でも主活性点であるゼオライトだけではなく、フィラーやバインダー等のマトリックスも脱酸素化に寄与している結果を得ており、各触媒成分が脱酸素反応に及ぼす影響を明らかにすることにも取り組む。 また、フェノール類の脱酸素化の促進に向けて、水素供与能の強い水素供与体を用いた検討や、水素移行反応活性の強い触媒の利用を検討することで、完全脱酸素化と芳香族炭化水素への転換を目指す。また、芳香族炭化水素の中でも高価値である単環芳香族を製造するためには、脱酸素化の促進とともに重合反応の抑制が必要である。重合反応は含酸素官能基が活性点となって進行することが考えられる。そこで、水素移行反応を利用した脱酸素化が重合反応の抑制にも効果をもつかどうかについても検討し、単環芳香族の増収を目指す。
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Causes of Carryover |
例年3月に開催される国際会議(米国化学会)に参加するための旅費を計上していたが、平成29年はその会議の開催が4月であったため、旅費を繰り越して次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と平成29年度請求額を合わせて平成29年4月に開催される国際会議に参加するための旅費及び参加費として使用する。
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Research Products
(6 results)