2015 Fiscal Year Research-status Report
超分子の規則的配列を用いたイオン伝導パス構築とユビキタス金属イオン伝導体への展開
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15K21045
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
守谷 誠 静岡大学, 理学部, 講師 (70452208)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マグネシウム電池 / 固体電解質 / 超分子 / イオン電導 / ナトリウム / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
安全、高容量、安価という要求を満たす次世代蓄電池の実現には海水中に豊富に含まれるナトリウムイオンやクラーク数が上位のマグネシウムイオンを高速かつ選択的に伝導させる固体電解質の開発が望まれるという観点から、本年度はこれらのイオン伝導性を示す超分子化合物の合成を主に検討した。具体的には(1)これらの金属イオンを含む超分子結晶の合成と、(2)固体電解質のマトリックスとなる新規有機イオン材料の開発の二項目を試みた。 項目1ではマグネシウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドを出発原料に、鎖長の異なるグライム(モノグライム、ジグライム、トリグライム)を作用させることにより、一連の超分子結晶化合物を単結晶として得た。この単結晶を用いてX線構造解析を行うことにより、生成物の分子構造を明らかにすることに成功した。この結晶構造はマグネシウム電池用電解液中でのマグネシウムイオンの溶媒和構造に相当するものでもあることから、固体電解質のみならず電解液の開発にも重要な知見を与える結果が得られたものと考えている。 項目2では、塩を高濃度に溶解させることが可能であり、電位窓も広いイオン液体のアニオンをルイス酸で修飾することにより、広範な温度域で固体とした扱えイオン伝導性も示す有機イオン材料が得られることを見出した。こちらの試料についても、項目1と同様に単結晶X線構造解析からその分子構造を明らかにするとともに、アニオンがルイス酸で修飾されていることを確認した。また、得られた有機イオン材料にナトリウム塩をドープすることにより、固体状態でナトリウムイオン伝導性が発現することも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はユビキタス金属イオンを固体状態で伝導させられる超分子化合物を開発することである。すでに、本研究課題では数種のマグネシウムやナトリウムイオン伝導性を示す化合物を得ることに成功しており、その結晶構造も明らかにしている。現時点では、このようにして明らかにした生成物の結晶構造から、特性向上に向けた分子構造制御に着手している段階にある。また、固体電解質の開発という目的で研究を進めてきたが、この研究を通して「電解液中でのマグネシウムイオンの溶媒和様式」に相当する構造を明らかにするという、マグネシウム電池向け電解液の開発にも有用な知見を得ることもできた。このようにして得られた研究成果は、国内、国外での学会発表、論文発表により公表しており、またサイエンスカフェでの講演や自身のウェブサイト開設を通じ社会への研究成果の発表も行っている。また開発したマグネシウム伝導体に関する成果は特許出願も行った。したがって、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に一定の成果が得られていることから、今後も当初の計画に沿って研究を進める。具体的にはこれまでに得られてきたユビキタス金属イオン伝導性を示す超分子化合物の構造制御と特性向上に向けた材料設計指針の構築に取り組む。ナトリウムイオン伝導体に関しては、イオン伝導性の評価に加え、電位窓やナトリウムイオン輸率の測定も行い電解質としての特性を多角的に評価していく。マグネシウムイオン伝導体の開発については、イオン伝導性の大幅な向上を主眼に構造最適化を図る。研究期間の後半では、伝導性の高い試料を電解質としたマグネシウムの電気化学的な析出についても検討を行い、マグネシウム電池への適用可能性を探る予定である。
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