2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21052
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐野 真規 浜松医科大学, 医学部附属病院, 医員 (40733514)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / TGF-β / 筋線維芽細胞 / 皮膚線維化 / エイコサペント酸エチル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には①リンパ浮腫モデルの確立、②リンパ浮腫病態解明、③エイコサペント酸エチル(EPA)の治療効果の検証(in vivo)を計画した。 まずSDラット下肢を用いて二次性リンパ浮腫モデルを作成し、術後6カ月後まで観察した。リンパ浮腫モデル群では、急性期(術後3~7日)に炎症細胞浸潤とリンパ液貯留、亜急性期(術後14~28日)にリンパ液貯留と脂肪細胞増生、慢性期(術後56~168日)に脂肪細胞増生と膠原線維の増生を認めた。ヒトリンパ浮腫病期分類と比較すると、急性期は病期Ⅰ、亜急性期は病期Ⅱ、慢性期は病期Ⅲに相当し、二次性リンパ浮腫モデルの作成が確立できた。 次にラットモデルを用いて病態について検証した。まず、PCR解析にてリンパ浮腫モデル慢性期の皮膚組織中のTGF-βとコラーゲン(typeⅠ、Ⅲ)のmRNA発現の増加が示され、さらに免疫染色にて皮下組織中の線維芽細胞の大型化とαアクチン・TGF-βの発現が示された。以上より、二次性リンパ浮腫の皮膚線維化には筋線維芽細胞から産生されるTGF-βが重要な働きをしていると考えられた。 さらに、リンパ浮腫モデルの術後2週~6カ月にEPAを混餌投与し、EPAの皮膚硬化抑制効果について検証した。EPA群ではリンパ浮腫群に比べ下肢体積は減少し、皮膚組織中のTGF-βとコラーゲンのmRNA発現も減少した。以上より、EPAが筋線維芽細胞から産生されたTGF-βを抑制し、線維化が抑制された可能性が示唆された。 今後はさらに、in vitro実験にて筋線維芽細胞の病態への関与およびEPAの治療効果の検証を行う。ラットモデルとヒトリンパ浮腫症例の皮膚組織から線維芽細胞を初代培養し、TGF-β1、コラーゲン発現、細胞形態について評価する。さらに培地中へのEPA添加によるTGF-β1やコラーゲン発現量や細胞形態変化について評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に予定していた「ラットリンパ浮腫モデルの確立と、リンパ浮腫の病態解明についてのin vivo 研究」および「EPAの皮膚硬化の抑制効果についてのin vivo 研究」については十分な実験結果が得られた。2年目の「EPAのコラーゲン産生抑制効果についてのin vitro研究」を開始しており、進歩状況はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は「EPAのコラーゲン産生抑制効果についてのin vitro研究」を予定している。ラットリンパ浮腫モデルとヒトリンパ浮腫症例から、皮膚生検を行い、得られた組織から線維芽細胞の初代培養を行う。線維芽細胞の発現するTGF-β1やコラーゲン量を測定する。さらに線維芽細胞の形態についてのin vitroでの評価を行う。また培地中にEPAを添加し、TGF-β1やコラーゲンの発現量や細胞形態の変化について評価し、EPAの線維化に対する治療効果について検討する。 ①ラット線維芽細胞を用いたin vitro 実験 ラットリンパ浮腫モデルの皮膚から、筋線維芽細胞の初代培養を行い、TGF-β1やコラーゲンの発現量をreal time PCR解析とELISA法を用いて評価する。また線維芽細胞の形態とαアクチン発現を免疫染色を用いて評価する。さらにEPAを培地内に添加し、同様にコラーゲン、TGF-β1の発現量及び、線維芽細胞の形態を評価する。 ②ヒトリンパ浮腫線維芽細胞を用いたin vitro 実験 浜松医科大学附属病院血管外科と皮膚科で経過観察中の片側下肢二次性リンパ浮腫症例において、リンパ浮腫を認める部位の皮膚生検を行い、線維芽細胞の初代培養を行う。患側と健側の線維芽細胞において、コラーゲン、TGF-β1の発現量、αアクチンの発現について、比較する。さらにEPAの添加による、コラーゲン、TGF-β1の発現量、αアクチンの発現の変化について評価し、ヒト線維芽細胞に対するEPAの効果を検証する。
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Research Products
(6 results)