2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格制御によるミトコンドリア品質維持機構の解明
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15K21055
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
近藤 豪 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10712705)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / ミトコンドリア / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの機能維持においてγ-tubulinが果たす役割を明らかにする目的で、神経系に特異的に発現しているTUBG2遺伝子の機能解析を進めた。 マウス初代培養神経を用いた実験により、Tubg2-KO細胞が示すミトコンドリアの形態異常、ATP産生の低下、抑制性神経の電気生理的異常については、異所性にTUBG2を発現させると回復すること、この回復はTUBG1では起こらずTUBG2特異的な機能であることを確認した。 昨年度、免疫沈降-質量分析のプロテオミクス解析により同定したTUBG2に親和性を示すミトコンドリア関連タンパク質について、結合性や細胞内共局在性、ミトコンドリアへの影響を検証した。既報の通り当該タンパク質を細胞に発現させるとミトコンドリアの形態に変化が生じた。そこで培養細胞にTUBG2と共に発現させたところ、質量分析の結果に一致して生化学的実験では結合性を認めたものの、共焦点イメージングで細胞内の局在性を検討しても、TUBG2との積極的な関係性を認めなかった。質量分析の結果から、他の結合分子候補として微小管以外の細胞骨格分子を疑ったが、こちらも積極的な関連性は見られなかった。 昨年度の結果から多系統萎縮症(MSA)との関係性が疑われたので、Tubg2-KOマウスの脳にMSAの特徴が見られるか検証したが、MSAの最大の特徴であるグリア細胞質内封入体(GCI)は認めなかった。このことから、MSAにおけるTUBG2の異常は当該疾患の根本的な原因ではなく、疾患の病変の中で2次的に起こる異常だと考えられる。TUBG2の損失は単独でミトコンドリア異常につながるため、MSAの病態において悪性度に影響するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続きTubg2-KOマウスの細胞生物学的解析を進め、TUBG1とは異なるTUBG2タンパク質特異的な機能を確認した。またTubg2-KOマウスとヒト神経変性疾患の病態を比較した。一方で昨年度に同定したTUBG2結合タンパク質が、TUBG2特異的機能に貢献しているか検証したが、分子メカニズム解明に至る結果が得られなかった。以上のことから、全体に研究は進んでいるものの、メカニズム解明部分が期待通りに進まなかったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている分子メカニズム解明部分については、生化学的結合分子の視点とは別に、超解像イメージング等を用いた細胞生物学的視点で解析を進める。特にTUBG1タンパク質とTUBG2タンパク質がそれぞれ形成する微小管の性状や分布の違いに着目する。TUBG2が神経特異的に発現すること、且つTUBG1欠損は細胞生存に著しく影響することから、培養細胞において適切に両者を比較することが難しかったが、現在構築しているCRISPR/Cas9システムを応用したコンディショナルノックアウト系を利用して、TUBG1-cKO細胞上でTUBG1またはTUBG2を再構成することを検討している。またH29年度は研究計画の最終年度であるため、適宜論文等で発表する準備を進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度交付された直接経費900,000万円のうち128,909円を次年度使用とした。理由は研究の遂行上、新年度に入ってすぐ必要な試薬類が生じる場合が考えられ、平成29年度分の交付前であっても対応できるようにするためである。特に推進方策として前述したとおり解析手法を変える予定であるので、新年度早々に試薬の調達が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度初頭に実験上必要な試薬類の購入に当てる。
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