2015 Fiscal Year Research-status Report
薬物代謝および免疫因子を考慮した薬物性肝障害のin vitroリスク評価系の開発
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15K21057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
織田 進吾 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10725534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬剤性肝障害 / DILI / 免疫 / 炎症 / in vitro / HepaRG / 予測試験系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の計画通り、in vitro薬剤性肝障害 (drug-induced liver injury, DILI) 予測評価系として、薬物代謝反応を考慮し、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとすることの有用性について検証した。医薬品の臨床DILIリスクをFDAのLiver Toxicity Knowledge Base Benchmark Datasetより抽出した。96種類の薬物 (100 microMを上限とし、HL-60の生存率が70%を下回らない濃度) をHepG2または分化HepaRG細胞に24時間処置し、その培養上清をHL-60細胞に暴露させた。24時間後、HL-60細胞よりtotal RNAを抽出し、real-time PCRによりMCP-1, S100A9, IL-1beta, IL-8及びTNFalpha mRNAの発現量を測定した。各mRNA発現量のDILI予測マーカーとしての有用性はreceiver operating characteristic (ROC) 曲線に基づき評価した。HepaRG培養上清を暴露させたHL-60 (HepaRG/HL-60) におけるIL-8発現量のROC-AUCは最も高値 (0.758) であり、次いでHepaRG/HL-60におけるIL-1beta (AUC-ROC = 0.726) による予測性が良好であった。いずれの遺伝子においてもHepaRG培養上清を暴露させた方がHepG2よりもAUC-ROCが高値傾向にあることから、薬物代謝を考慮することで予測性が向上することが示唆された。予測性が良好であったIL-1beta, IL-8及びS100A9発現量において、各々cut-off値以上を示す薬剤にはscore (+1点) を与え、3遺伝子におけるscoreの総和値 (immune inducible score, IIS) を算出し、その値のDILI予測性も同様に評価した。その結果、HepG2とHepaRGのIISによるAUC-ROCはより高値 (0.819) を示し、複数のパラメーターを考慮することでDILIの予測性が向上することが明らかとなった。以上本年度は、DILIのin vitro予測試験系として、免疫および炎症関連遺伝子発現量をマーカーとした試験系の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に提示した初年度の目的(免疫及び炎症関連遺伝子を指標とした薬剤性肝障害のin vitroリスク評価系の構築)が今年度中に達成された。また、本内容が国際学術誌Toxicology Lettersに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
肝癌由来細胞株であるHepG2及びHepaRG細胞は抗酸化物質であるグルタチオンを豊富に含む。グルタチオンは内因性及び外因性に生じる活性酸素種を消去する役割があり、医薬品またはその反応性代謝物の解毒代謝にも関与している。従って、グルタチオン含量の高いHepG2及びHepaRG細胞は医薬品による酸化ストレスに対して耐性を有すると考えられる。試験系のより高感度化を目指すため、グルタチオンを枯渇させた細胞におけるDILI予測性を検討する。
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Causes of Carryover |
予備検討が順調に進行し、低コストで研究が進んだためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞内グルタチオンを枯渇させるためにbuthionine sulfoximine及びグルタチオン含量測定試薬を購入する。更に薬剤処置後の細胞生存率測定用に、細胞生存率測定キットを購入する。その他、細胞培養関係費及び定量PCR測定用試薬の購入に充てる。
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