2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21067
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 真路 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (60533792)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / 神経細胞移動 / 神経極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の損傷時に分泌されるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) は、軸索の再生を強く阻害する。しかし、CSPGは胎生期の脳にも高発現しており、神経細胞への影響は阻害作用に限らないと考えられる。本研究では、胎生期の大脳皮質において、脳室帯と中間帯には4-硫酸化CSが、皮質板には非硫酸型CSが局在していることを見出した。また、4-硫酸化CSの局在はコンドロイチン4-O-硫酸基転移酵素1 (C4ST-1) の発現パターンと相関があり、C4ST-1は脳室帯と中間帯では強く発現するが、神経細胞が皮質板に到達すると発現が低下することが分かった。そこで、C4ST-1の発現を低下させたところ、神経細胞が皮質板まで到達できず中間帯に留まることが分かった。正常な神経細胞は皮質板へ移動する際に、多極性から双極性へ形態変化するが、4-硫酸化CS発現低下細胞は多極性の形態を保っていた。分散培養した神経細胞においても、4-硫酸化CSは神経細胞の極性形成に必要であり、培地中にCS分解酵素を加えることで突起伸長が阻害された。さらに、4-硫酸化CSの担体タンパク質として、胎生期の脳に一過的に発現するCSPGであるneurocanを同定した。C4ST-1の発現低下と同様に、neurocan発現抑制によっても、神経細胞移動と形態変化が阻害された。これらの結果から、中間帯を移動中の未熟な神経細胞は、4-硫酸化CS鎖を持つneurocanを発現しており、それによってつくられる微小環境は、神経細胞の極性形成と正常な大脳皮質の発生に必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4-硫酸化CSのコアタンパク質としてneurocanを同定することができた。さらに、neurocanの相互作用分子の同定にも成功したため、これらの分子の機能解析が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定したコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるneurocanを中心にして、この分子と相互作用する細胞外マトリクス分子を網羅的に解析する。さらに、それらの分子が神経細胞移動と形態形成に与える影響を検証し、発生期の脳に形成される細胞外微小環境が神経細胞の極性を制御する分子機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
簡易細胞イメージングシステムを購入予定であったが、予算内で購入可能なシステムの性能は十分ではなく、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予備的な実験条件検討の結果、生細胞イメージングは、申請者が所属する研究科のイメージングシステムによって目的を達成できることが分かった。そこで、次年度使用額は、生細胞イメージングに必要な消耗品と遺伝子導入試薬の購入に充てることで当初の研究計画を遂行する。
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