2015 Fiscal Year Research-status Report
全自動1細胞解析単離装置による大規模嗅覚受容体レパトア解析
Project/Area Number |
15K21068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
良元 伸男 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授 (80467612)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 1細胞解析 / 全自動1細胞解析単離装置 / タイムラプスサイトメトリー / 嗅覚細胞 / 嗅覚受容体 / 匂い分子 / 嗅覚受容体レパトア / バイオセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物は、嗅覚受容体を発現する嗅覚細胞によりその数40万種とも言われる匂いを知覚する。一方、嗅覚受容体の種類はヒトで約400種類、犬やマウスで1,000種類程度であり、匂いの種類に比べてその数は圧倒的に少ない。しかし、特定の匂いに対して強い親和性を示す嗅覚受容体が存在する一方、弱く親和性を示す他の嗅覚受容体群も協調的に働き、それらの組み合わせにより膨大な種類の匂い識別を可能にしている(嗅覚受容体レパトア概念)。匂い分子による嗅覚細胞の応答の強弱を試験管内で解析するには、匂い分子と嗅覚受容体が結合した時、嗅覚細胞がCaイオンを取り込む性質を利用して、蛍光Caインジケータで可視化・数値化する。従って、実験系としては匂い分子による嗅覚細胞の刺激と緩衝液による洗浄を潅流装置により連続的に行い、顕微鏡観察下で長時間蛍光輝度変化を観察する必要がある。一方、我々がこれまで開発してきた全自動1細胞解析単離装置は直径10μmのウェルが256,000個掘られたアレイチップに細胞を導入することで細胞を整列し、一度に20万細胞以上を解析できる。今回さらに潅流系を搭載することで嗅覚細胞アレイのリアルタイム蛍光変化差分解析(タイムラプスサイトメトリー)を可能にした。本系により匂い分子に応答する嗅覚細胞の応答をハイスループットに観察・解析した。これまでは1回の実験で約5,600個の嗅上皮細胞由来細胞群の解析規模であったが、本研究では約9倍の~50,000細胞の解析を可能にした。研究途中、嗅上皮に含まれる嗅覚細胞の含有率は~4.6%の頻度で検出されると判明し、1度に2,000~2,500細胞の嗅覚細胞の応答が解析できると示唆された。今後、温調システムを装置に実装(これまでは室温解析)して細胞の生存率を安定させ、より解析エリアを広域化する改善も取り入れ、精密な嗅覚受容体レパトア解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画にあった全自動1細胞解析単離装置本体の改造は平成26年度後半から27年度後半にかけて大きくバージョンアップされ、本年度研究では、1) 装置の基本的動作の再確認を実施した他、これまでの成果をScientific Reportへ投稿したところ、2) 嗅上皮由来細胞に含まれる嗅覚細胞の純度と正確な陽性判定閾値を調べるよう要求され、これまでの研究追試と追加実験を行った(Sci. Rep. 6, 19934 (2016); 2015年12月21日アクセプト、2016年2月2日掲載およびプレス発表)。具体的にはマウスから嗅上皮を採取して、蛍光カルシウムインジケータ(Fluo4-AM (Ex495/Em518))を含むリンガー溶液中に懸濁し、直径10 μmのマイクロチャンバーアレイチップ(256,000ウェル)上に設置した潅流チップ内に嗅上皮を播種した。各濃度の匂い分子(尿中に含まれる揮発性肺癌マーカー(2-pentanone,pyridine,2-butanone)や、化粧品等に含まれる香気成分eugenol)を含むリンガー溶液を潅流系により送液して嗅覚細胞を刺激し、全自動1細胞解析単離装置によるタイムラプスサイトメトリー解析を行った。マイクロチャンバーへの嗅上皮由来細胞導入効率は透過画像および核染色で確認し、嗅覚細胞表面抗原であるNCAM2の免疫染色により嗅覚細胞アレイの純度を確認した。結果、嗅覚上皮由来細胞に含まれる嗅覚細胞は~4.6%と判明した。さらにOR73( eugenol第一受容体)のCアミノ末端に赤色蛍光タンパク質を融合したM71-RFPを発現するトランスジェニックマウスを用い、経験則に基づく陽性判定閾値(蛍光輝度変化量F-Fo > 30(F, 匂い分子刺激後の蛍光実測値; Fo, 解析細胞全体の初期蛍光バックグラウンド平均値))を正確に測定する実験も併せて行った。結果、陽性判定をF=Fo+3SDとして算出したところ、これまでの経験則に基づいたF=Fo + 30と同等であると判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 平成27年度におこなった別実験(4℃、25℃、37℃での細胞生存率の測定)から、これまでの室温(25℃)での反応では細胞の生存率が低下すると判明した。従って温調システム(37℃が最適)を併用する。 2) 本研究において1試行で解析できる細胞数を約5,500細胞から約50,000細胞と約9倍にするべく、解析サブエリアの広域化により、約5,500から約50,000細胞解析は達成されたが、嗅上皮由来細胞に含まれる嗅覚細胞の含有率(~4.6%)が低く、より解析エリアを広域化する必要があると思われた。対応策として現行10倍対物レンズが仕様であるが4倍対物レンズにカスタマイズして視野をより広くし、現行2×2サブエリア/スナップショットを4×4サブエリア/スナップショットへと更に広域化する(本年度達成した約9倍の更に4倍増、約20万細胞)。レンズを低倍率にする事により、データ解像度の低下が生じると想定されるので、画像読み込み速度を高速化するために解析ソフトの改良も視野に入れる。 3) 実際に匂いの需要のプロである企業からの人員配備で研究を強力に進める。具体的には次年度の布石として共同研究先を探した。現在、大学機関では2研究室内定(阪大、東大)、企業では4社確定(大阪大学-細胞工学研究所・共同研究契約締結、大阪大学-アズワン株式会社-古河電気工業株式会社・3者間共同研究契約締結)、さらに次年度行う予定の複雑な匂い混合物に関する研究推進のため、企業2社と研究打合せを綿密に行い、三栄源エフ・エフ・アイ(香料関係企業、大阪)、天野エンザイム(酵素関係企業、名古屋・岐阜)との共同研究を進めるべく現在進行形で打合せを行っている。
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Causes of Carryover |
1)名古屋大学在籍時に当初予定していた海外国際学会(計画ではESACT2015であったが本研究課題に適するPacifichem2015へ変更)への旅費(約35万円)支出に関し、急遽大阪大学への異動が決まり、大阪大学では職務として行う研究活動や教育活動等のエフォート(90%)と本研究エフォート(10%)が日割りで義務付けられたため、複数日をまたぐ旅費申請が主たるエフォート側の財源で出張せざるをえなくなったため。 1)大阪大学産業科学研究所の生体分子反応工学研究分野赴任時、当該研究に必要な設備の再整理・再整備を行う必要が生じ、2015年4月1日から5月GW明けまでは多くの時間をかけねばならなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全自動1細胞解析単離装置のパーツとして必要不可欠なマイクロチャンバーアレイチップ(定価1枚5,000円)、およびガラスキャピラリー(定価1本5,000円)の無償提供期間が中途終了し、平成28年度からは購入することとなったた。実験に供するこれら消耗品は50セット(約50万円)程必要と見積もっており、繰り越した研究費を充てたいと考えている。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Virosomes of hepatitis B virus envelope L proteins containing doxorubicin: synergistic enhancement of human liver-specific antitumor growth activity by radiotherapy2015
Author(s)
Liu Q, Jung J, Somiya M, Iijima M, Yoshimoto N, Niimi T, Maturana AD, Shin SH, Jeong SY, Choi EK, Kuroda S
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Journal Title
International Journal of Nanomedicine
Volume: 10
Pages: 4159-4172
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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