2015 Fiscal Year Research-status Report
小口径人工血管開発を目指した『ペプチド・ECM』選択的ペプチドの網羅的探索
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15K21070
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
蟹江 慧 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (80636407)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / ペプチド / 細胞接着 / 内皮細胞 / コラーゲンIV |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人工血管の治癒効果を高める『短鎖選択的接着ペプチド』を取得することである。具体的には、①特定の細胞外マトリックス(ECM)だけを接着させるペプチド、②内皮細胞だけを接着させるペプチドをコンビナトリアルに網羅的に探索し、最適配列を発見することである。研究1年目の平成27年度では、特に上記の①特定のECMタンパク質だけを接着させるペプチドの探索と②の内皮細胞だけを接着させるペプチド探索の条件検討を試みた。 ①の特定のECMタンパク質だけを接着させるペプチド探索では、血管の内皮化に必要なコラーゲンIV、血栓形成の原因となるトロンビンに対して実験を行った。使用したのは、PEPperPRINT社のPEPperCHIPを用い、3残基全8000種類のペプチドに対してスクリーニングを行った。その結果、545種類のペプチドがコラーゲンIVには接着し、トロンビンには接着しない、コラーゲンIV選択的接着ペプチドであることが分かった。更に、アミノ酸の物理的性質(疎水度、電荷、サイズなど)を表す指標を用い、詳細にコラーゲンIV選択的ペプチドを解析したところ、選択性が低いグループは電荷や疎水度だけでは言い表せない複雑なルールが存在することが分かった。選択性が高いグループでは、ルールが明確化しており、特に3残基目の影響が大きいことが分かった。 ②の内皮細胞接着ペプチド探索にも、PEPperPRINT社のペプチドマイクロアレイを用いた検討を行ったが、ペプチド合成量が足りず、細胞接着実験がうまく進まなかった。しかし、本研究室で開発したペプチドアレイ法を用いることにより、スループット性は落ちるものの、探索可能であるため、今後はペプチドアレイ法を用いた探索を開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ECM選択的接着ペプチドと、内皮細胞選択的接着ペプチドの2種類の探索を行う。ECM選択的接着ペプチドに関しては、当初の予定通り、ペプチドマイクロアレイにより探索が可能であった。しかし、内皮細胞選択的接着ペプチドの探索には、ペプチドマイクロアレイが適合しておらず、細胞接着の検出には至らなかった。そこで、本研究室が独自開発したペプチドアレイを用いた探索方法に切り替えている。 そのため、目標のおおむねは順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、当初の予定ではペプチドマイクロアレイを用いた内皮細胞選択的接着ペプチドの網羅的探索を行うことを予定していた。しかし、上述の通り、ペプチドマイクロアレイでは探索が困難であるため、ペプチドアレイによる探索を試みる。 また、得られたペプチド配列に関して、配列の解析や・統計処理を行い、内皮細胞選択的に接着するペプチドの構造ルールの抽出にも着手する。 更に得られた、ECM選択的接着ペプチドと、内皮細胞選択的接着ペプチドの効果検証を行うため、各ペプチドを組み合わせ相乗効果を狙う研究も計画に入れている。
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