2016 Fiscal Year Research-status Report
高度なデータ駆動型手法を用いた脳の予測メカニズムのモデリング
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15K21079
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
東 広志 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70734474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 事象関連電位 / P300 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,ヒトの予測を反映する事象関連電位と呼ばれる脳波成分(特にP300)の特性を調査した.2選択反応時間タスクと呼ばれるタスクを実験参加者に課して脳波計測を行った.実験参加者は,ある確率モデルにしたがって発生するイベントを観測し,イベントに合わせた応答を行う.ヒトが予測をうまく行えている場合,行動は最適化され,より早く,正確に応答できるようになる.本研究では,外部イベントの発生モデルとして,状態遷移を含むモデルを設定した.実験参加者の行動応答結果は,発生モデルによって説明可能であり,状態遷移を含むモデルに対して,ヒトは予測しながら行動を選択していることがわかった.さらに,発生モデルと脳波応答を,個人効果などを排除可能な一般化線形モデルによって解析した.その結果,P300におけるP3aとP3bと呼ばれる2つのサブコンポーネントが,異なるメカニズムを反映することを発見した.P3aは,脳内に予測モデルが構築される過程を反映していることが示唆された.また,P3bは,予測モデルが安定した後に,モデルによる予測と外部イベントに誤差が生じたときに発生する.これらの結果から,1. ヒトが状態遷移を含むモデルを脳内で構築する,2. 発生モデルが時間によって変化しない場合,脳内モデル更新はある時点で収束する,3. P3bに反映される予測誤差は脳内モデルと直接は関係しない,ことを示唆した. また,脳波に対して,グラフフーリエ変換を用いたアーチファクト除去の開発を行った. 提案方法は,主成分分析と独立成分分析を用いた方法と比べて,精度よくアーチファクトを除去できることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り,信号処理手法の開発と脳波解析が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行った研究をさらに発展させて,より複雑な状態遷移モデルを用いて脳波計測実験を行う.これによって,予測能力の精度,容量,速度を定量的に明らかにする. また,脳内の内部モデルに対して,ノンパラメトリックモデルを導入する.これにより,状態空間の大きさが分からない発生モデルに対して,内部モデルがどのように構築されるのかを明らかにする.
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Causes of Carryover |
平成28年度に購入予定でワークステーションの納期が遅れたため. また,今年度に参加予定であった国際会議参加を次年度に延期したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に購入予定であった物品を購入し,今年度行う予定の研究計画と併せて実施する. また,前年度参加予定であった国際会議に参加する.
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