2015 Fiscal Year Research-status Report
エイズウイルスの経路依存的な新規細胞侵入機構と薬剤耐性との関連性
Project/Area Number |
15K21084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
志村 和也 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (90613836)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HIV / 細胞間感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の主要な感染経路の一つである細胞間感染に着目し、本感染経路における感染効率や抗HIV薬の活性などの性状を解析することを目的としている。 始めに、本研究課題を遂行する上で必要な潜伏感染細胞の樹立を試みた。ウイルス感染のマーカーとして、青色蛍光タンパク質(BFP)遺伝子を組み込んだ感染性HIVクローンであるpNL-BFPを、ヒトT細胞株であるJurkat細胞に導入し、限外希釈により多数のシングルクローンを得た。十分に細胞が増殖した後、TNF-alphaによるLTR活性化を介したBFPの発現誘導を指標に数クローンを選抜した。続けて、これらの細胞クローンからのウイルス産生能をviral outgrowth assayにより評価した。TNF-alpha刺激により培養上清中に産生されたウイルス粒子をMT-4細胞あるいはMAGI細胞に感染させ、標的細胞におけるBFP発現あるいはレポーター(beta-galactosidase)発現を定量した。その結果、ウイルス産生能が非常に高いクローンから、まったくウイルスを産生しないクローンまで、多様であった。これは宿主細胞染色体への組み込み部位の違いなどに起因することが考えられた。そこで、定常状態では低BFPを示し、かつ、TNF-alphaへの反応性に優れ、十分なウイルス産生能を有する潜伏感染クローンBH11を今後の実験に使用した。本潜伏感染細胞を用いて、これまでに多数報告のある細胞活性化試薬の活性化能の比較を行った。評価に供した化合物の中で、BRD4阻害剤として知られるJQ-1に、T細胞活性化を伴わない優れた潜伏感染活性化能が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、HIVの細胞間感染を高効率で感度よく評価可能な定量系が必須であるが、平成27年度においてはこの評価系を確立し、これを論文として報告した。また、本研究課題の遂行に必要な潜伏感染モデル細胞を樹立し、活性化により感染性ウイルスが産生されることを確認した。また、産生されたウイルスは、セルフリー感染だけでなく、活性化潜伏感染細胞から非感染細胞への細胞間感染により感染が拡大することも明らかにした。これに加えて、 これまでに報告のある数種類の細胞活性化試薬の中から、JQ-1が低濃度において細胞毒性を示さず、かつCD69などの活性化抗原の誘導も引き起こさず、TNF-alphaと同程度のウイルス産生誘導能を示すなどの知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
HIV潜伏感染細胞をドナー細胞として用いる細胞間感染の実験においては、各種抗HIV薬の活性を評価し、セルフリー感染との差異や、HIV急性感染細胞での細胞間感染との比較を行う。 さらに、樹立した潜伏感染細胞を用いて、細胞間感染における標的細胞への侵入機構について解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも効率的に潜伏感染モデル細胞が樹立できたため、今年度使用しなかった消耗品費を次年度使用額とした。また、掲載費が必要ない雑誌に論文が受理されたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の解析に必要な消耗品、特に顕微鏡下での解析やフローサイトメトリー解析に必要な抗体等の購入費に充てる。
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