2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K21089
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60362547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 船舶先取特権 / 準拠法 / 対物訴訟 / 運送契約 / 倒産 / 運送法制 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に引き続き文献の収集と分析を続けながら、運送法制および船舶の物権関係に関していくつかの論文を執筆した。 特に、船舶先取特権に関しては、平成28年度中に国際取引法の研究会においてその準拠法をめぐる議論について報告を行っていたところであるが、その後実施した文献調査を踏まえて報告内容を再検討し、平成29年度中に論文にまとめた(平成30年中に公表される予定である)。従来の議論との関係では、①国際私法学説にとどまらず、実質法の統一ないし調和の経緯と程度、さらに現在の日本の実質法の状況を検討した上で、旗国法説と特定の実質法的価値の結びつきを一応示すことができたこと、②この検討を前提として、裁判例と近年の学説の議論を批判的に検討し、様々な性格のものがある船舶先取特権について、それぞれにどのように適用されるべき法を決定すべきかを論じている点で、新たな意義があると思われる。なお、その中で引用している重要な外国判例については、海事関係の研究会で報告、検討しており、これについても、平成30年度中に論文を執筆して公表する予定である。 このほか、運送法制全般に関わる研究として、ドイツと日本の運送法制の比較・検討を目的とするシンポジウムに出席し、報告を行った。このシンポジウムでの報告と質疑をもとにした研究成果は、海法会誌復刊61号(平成30年3月刊行)において公表している。また、あわせてイタリア共和国ジェノヴァ市にて開催された万国海法会のセミナーに参加し、情報収集を行った。セミナーにおける船社倒産、燃料油供給業者の倒産に関する議論については、補充的な調査を行った上で、問題状況を簡単に紹介する論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、本研究課題の計画を作成した時点では予定していなかった、別の複数の研究プロジェクトに参加する機会を得た。結果的に、年度前半は、本研究課題のために収集した文献を検討するための時間を十分に確保することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの遅れを挽回すべく研究を進めているが、その中で、船舶の物権関係に関する検討課題は、当初予想していた以上に多岐にわたることが分かってきた。このため、当初の研究計画に比べると検討対象を絞り込む形にはなるが、船舶の物権関係に関する検討事項のうち成果として取りまとめることができていない事項、特に準拠法の問題を検討する際に前提とした実質法の問題状況について、優先的に検討を行い、成果としてとりまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
洋書の刊行予定の変更に伴い使用計画を変更したため、次年度使用額が生じた。当初の予定通り、本年度分の物品費とあわせて図書の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(6 results)