2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバルイシューの国際協調-移民ガバナンスの体系的・理論的研究-
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15K21094
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
中山 裕美 東京都市大学, その他部局等, 研究員 (90634014)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民 / グローバル・ガバナンス / 地域統合 / 地域協力プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は近年の移民ガバナンスの新たな形態である地域協力プロセスに報告書や成果文書を中心に一次資料の収集を新規に行ない、他のガバナンス形態との比較の上で、同プロセスの特徴の分析に着手している。とりわけ、同プロセスの合意形成過程および執行過程の手続きを詳細に分析することにより、移民問題をめぐる国際協調の障害を工夫する様々な制度的工夫を備えていることを示唆する結果を得ることができ、当該研究成果について「日本国際政治学会2015年度研究大会」および「東京外国語大学国際関係研究所主催研究会」にて発表した。しかしながら、これらの制度的工夫は受入国と送出国間の互恵性を生じさせる一方で、受入国による送出国への政策介入の呼び水になる側面を有していることが明らかになり、同プロセスの互恵性の評価は今後より一層慎重に行なう必要がある。 また移民ガバナンスに関する既存研究を体系立てて理解するために、先行研究の収集についても重点的に行なった。移民に関する研究の多くが個別事例研究が中心であり、研究アプローチに用いられているディシプリンも非常に多様であるため、特に国際関係理論に立脚した研究、アジア・アフリカ・ヨーロッパの地域特性を分析した研究を中心に資料を収集した。 その結果、理論研究が安全保障とのリンケージ分析、自由貿易とのリンケージ分析にそれぞれ偏重しており、移民に関する二国間・多国間の枠組みが課題としている移民問題の多面性とそのトレードオフに関する分析がなされておらず、安全保障と自由貿易とのリンケージの視点が欠けていることが明らかになった。また、地域的な研究については特に移動の原因や移動の動態に関する研究が多く、移民を対象とした国際的な取り決めに関する研究自体が少なく、国際的な取り決めについてはその種類や傾向についての分析にとどまっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施予定にしていた英オックスフォード大学における資料収集および、各種レベルの移民ガバナンスについての一次資料の収集が終了した。現在は資料の読み込み、分析を進める傍ら、個別ガバナンスの類型化作業に着手している。ガバナンスの規範の分類が当初の想定以上に重層的であったため類型化作業の指標の設定について試行錯誤の段階にあるが、交渉過程やガバナンスが設ける手続きについての精査が概ね終了しており、具体的な指標の設定と分類作業にまもなく着手できる状態である。 一方、次年度に予定しているガバナンス間の相互関係については既に一部研究に着手しており、その成果について学会等で報告を行ない、広く意見を求める機会を得ることができており、当初の予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、個別ガバナンスの類型化作業をすすめ、ガバナンス間の相互関係についての分析へと研究を推進させていく。その成果として、国際関係理論を用いてアジアにおける移民ガバナンスの動態を分析する論文の執筆を進め、学術誌へ投稿するほか、地域協力プロセスについての制度分析をさらにすすめ、学術誌へ投稿していく予定である。
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Causes of Carryover |
私的事情ではあるが、当該年度中に体調が不安定な時期が続いたため、予定していた出張の延期および調査期間の短縮などの結果、旅費部分で減額がおこり、次年度繰越額が生じた。 また、人件費・謝金に関しては、資料収集のための出張が年度終わりにずれ込んだため、当初計画していたより英語論文の執筆状況に遅れが生じたため、英語論文投稿のために計上していた英文校閲費を次年度へ繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は英語論文の執筆に精力的に取り組む計画であるため、英文校閲費に重点的に配分する予定であるほか、英語論文に必要な資料の追加収集や成果報告のための出張旅費などに配分していく計画である。
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