2017 Fiscal Year Annual Research Report
International Cooperation for Global Issue: A systematic and Theoretical Study about Migration Governance
Project/Area Number |
15K21094
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中山 裕美 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90634014)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域間主義 / 移民ガバナンス / 送り出し国 / 受け入れ国 / 経由国 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の前半は前年度に引き続きヨーロッパ-アフリカの地域間主義に基づく移動ガバナンスの研究を行なった。とりわけ投稿論文の査読結果を受けて、地域間主義の意義をグローバルな多国間主義や地域主義との相違点から明らかにするため、人の移動をめぐる地域間の力学の変化に着目した。その結果、移民の移動経路の多様化に伴い、従来は単なるルールテイカーであると考えられていたアフリカ諸国(移民の送り出し国)が、ヨーロッパ諸国(移民の受け入れ国)に対し、交渉を通したルール作りを要求するように変化したことが明らかになった。すなわち、本研究の研究計画当初に想定していた制度による便益提供が国家の戦略を変化させる誘引となるとする自由主義的制度論仮説に加え、移民ガバナンスをめぐる諸国間の力学変化が制度変化の誘引となるという新たな知見の発見に至った。 さらに、以上の発見から、移民の経由国の登場による送り出し国間の力学変化の可能性が示唆されたため、最終年度の後半は、移民の送り出し国側の動向に焦点を当て、ガバナンスの変化のダイナミズムを分析する作業を行なった。その結果、アフリカ諸国には従来から新自由主義に基づく人の自由移動に向けたガバナンスが存在したものの、その動きが活発化するのは比較的近年になってからであり、地域間主義の台頭と軌を一にしていることが明らかとなった。また移民送り出し国側がガバナンスの対象とするイシューも、自由移動にとどまらず、不法移民対策など多様化してきていることも明らかとなった。 すなわち、移民ガバナンスにおける地域間主義の台頭は、地域主義、多国間主義と相互に影響を与えており、その結果として移民ガバナンスの重層化が進展していると結論付けることができる。
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