2016 Fiscal Year Annual Research Report
食事誘導性肥満マウス視床下部におけるメチル化基質代謝変化に起因するエピゲノム解析
Project/Area Number |
15K21099
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
井上 雅文 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (10586655)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食事誘導性肥満 / オメガ6系脂質 / 慢性炎症 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / メチル化基質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
1994年のレプチンの発見を端緒として、レプチンシグナル関連遺伝子の単一遺伝子変異が肥満を惹起する分子機構が次々と解明された。これらの研究により、肥満・肥満症は単に自制心の欠如による美容上の問題ではなく、疾病として対処すべき医学上の研究課題であることが明確に認識されるようになってきた。一方、多くの肥満症患者においては、遺伝学的疾病感受性に加え、肥満を発症しやすくする生活環境に濃厚に曝露されることにより肥満症に罹患することも事実である。近年、食事やストレスなどの環境因子が、遺伝子変異ではなく遺伝子“修飾”を介して哺乳類個体の生理機能や疾患感受性を決定付けるしくみ(エピゲノム制御)が明らかとなり、疾患の成り立ちを遺伝因子と環境因子の二元論で論じることは難しくなりつつある。本研究では、視床下部性の食欲・エネルギー代謝の制御における食事誘導性エピゲノム変化の病態生理的意義を解明するため、新しい栄養素誘導肥満モデルの樹立、エピゲノム変化と関連するメタボローム変化の解析、ターゲッテッド・グローバルメチローム解析の3ステップで研究を行った。(1)生体内オメガ6系脂肪酸の基質であるリノール酸を高濃度に含有する飼料をマウスに自由摂餌させることで一栄養分子による肥満誘導が可能であることを示した。(2)よく用いられリノール酸を高濃度に含有する高脂肪食により肥満を誘導したマウスの視床下部を用いたメタボローム解析により、DNAメチル化基質の前駆体、メチオニンとスレオニンの減少が検出された。(3)実際に抗H3K9Ac免疫共沈物の定量PCRにより視床下部POMC遺伝子の転写制御領域のメチル化亢進を観察した。本研究はやむを得ない事情により年度内の中断となったが、今後、ChiP-Seq法・CAGE法によりゲノムワイドなメチローム解析を実施し、視床下部エピゲノム変化による肥満病態形成機序の解明を目指したい。
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Research Products
(5 results)