2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化における『狩猟採集民』と『農耕民』関係の再考
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15K21109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 裕美 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10646904)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 民族誌 / マイノリティ / 狩猟採集民 / ボルネオ / 先住民 / グローバリゼーション / エスニック・アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化社会における『狩猟採集民』と『農耕民』の現代的な関係性を再検討することを目的としている。2016年度は、マレーシア・サラワク州およびインドネシア東カリマンタン州と北カリマンタン州における現地調査を計画した。 (1)マレーシア・サラワク州における民族間関係の現地調査 2016年8月にマレーシア・サラワク州ビントゥルとブラガで調査を行った。町における狩猟採集民と農耕民の民族間関係に着目し、教会での行事を通じてシハンがどのようにカヤンやクニャなど近隣の人々と関係性を構築しているのか、観察とインタビューを行った。近年、当地域ではBorneo Evangelical Missionの宣教活動が再び始まっている。教会ではカヤン、ダンジョンといった他民族集団と一緒に活動し、他の地域の教会や村を訪問する機会が増えている。教会活動を通じて築かれる、より開かれた関係性を明らかにした。 (2)インドネシア・東カリマンタン州及び北カリマンタン州における民族間関係の現地調査 2016年9月にインドネシア・北カリマンタン州にて現地調査を実施した。カヤン・ウル郡およびカヤン・スラタン郡の複数のケニャの村を訪れて、農耕民の側から見た狩猟採集民との関係史について聞き取り調査を行った。続いて、北カリマンタン州マリナウ市において定住した狩猟採集民であるプナン・マリナウやプナン・アプットに口承史や言語について聞き取り調査を実施した。また、東カリマンタン州サマリンダ市近郊のスンガイ・クンジャン地区において、マハカム川上流域から都市に働きに出ているプナン・トゥブ、リスム、ブケットの人々に都市での生活と村の歴史、言語についてインタビューを行った。今後重要となる協力者やインフォーマントを見つけることができた。また、現地の大学を訪問し、地元の研究者と協力関係を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、着実に成果を蓄積しつつある。2015年度は、前半は国内における文献調査を中心に行い、夏にはマレーシアにおける現地調査を実施した。文献調査では、ボルネオ社会に関する文献資料、人類学におけるエスニック・アイデンティティ研究の文献を収集し、主として理論面での研究を進めた。現地調査では参与観察を行う上で不可欠なラポールを作ることに努め、複数の民族集団を対象にインタビューをおこなった。その結果、多角的な情報を収集することができた。年度の後半は、調査結果の分析と国内外の学会における研究成果の発表や論文執筆をおこなった。そして1年を通して、研究会などに積極的に参加し、情報収集と研究ネットワークの構築に努めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに引き続き、ボルネオ島の複数の都市やマレー半島における参与観察とインタビュー調査を実施する予定である。都市部に暮らす若い世代の間で、どのようにエスニック・アイデンティティの揺らぎがみられるのか、また、都市部で育った子供たち世代が、どのようなエスニック・アイデンティティを形成していくのか、調査を行う予定である。さらに、今年度は比較検討のために、インドネシア、カリマンタンにおける調査も計画している。研究成果は国際的な水準で発信していく予定である。
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