2015 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ村落住民の主体的協議に基づく放牧地管理システムの構築と指針の提示
Project/Area Number |
15K21110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 佳奈 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (10723413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放牧地 / 生存基盤 / 合意形成 / 資源管理 / タンザニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、放牧地をめぐる対立の事例を複数分析してローカルな合意形成の要件を抽出するとともに、牧草改良活動の導入によって住民の資源管理への積極的関与を促し、これらを踏まえて人々の主体的な協議を基盤とした放牧地管理システムを構築し、その指針を明らかにすることである。平成27年度は、自然資源をめぐる住民の交渉がどのように進められて、どのようなことに配慮されたのかを季節湿地の各所でみられた交渉や対話の事例を分析して、和解の形成プロセスを検討した。 人びとが対立を激化させることなく合意できたのは、第一には個人間の利害対立を地域社会の問題に切り替えるしくみが存在していたことがある。ボジ高原でみられた争いの特徴として、個人の利害衝突から始まった対立が地域社会の問題として扱われるようになり、そこに多くの人びとを巻き込みながら、資源利用に関する新たなルールを生みだしていった点が共通している。このルールがその後の安定的な土地利用を支えることにもなった。個人の対立の調停を地域社会の課題の解決へと転換するスイッチの役割を果たしていたのは、村区長や村長など行政組織の末端部のリーダーであった。 合意形成の第二のポイントは、住民の生存基盤を最優先するという姿勢が共有されていたことがあった。それは、余剰の資源、ここでは放牧地以外の湿地を分配する際に、すべての村びとに均等に分配するのではなく、土地が不足している世帯にだけ分配することで、村の生活水準を底上げしようとする態度から見て取ることができた。こういう村の決定に対しては誰からも不満が出ないのだが、そういう点に村の規範を読み取ることができるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
妊娠・出産ため今年度はタンザニアでの現地調査をおこなうことができず、予定していた事例収集と住民グループの結成を実施することができなかった。結果的に予備調査で収集した事例を分析するにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづき事例の分析を継続しながら、資源をめぐる合意形成の要件について議論を深めていく。住民グループの結成にむけて、環境保全や農村開発における技術の役割について文献研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
妊娠・出産のためタンザニアでの現地調査をおこなうことができず、海外旅費の出費がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文執筆のための英文校閲代、書籍代として使用するほか、調査地の衛星写真を購入して、土地利用の変容を解析する予定である。
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