2016 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ村落住民の主体的協議に基づく放牧地管理システムの構築と指針の提示
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15K21110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 佳奈 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (10723413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放牧地 / 資源利用 / 牛 / 人口圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東アフリカの農村地域を対象に、放牧地をめぐる対立の事例を複数分析してローカルな合意形成の要件を抽出するとともに、牧草改良活動の導入によって住民の資源管理への積極的関与を促し、これらを踏まえて人々の主体的な協議を基盤とした放牧地管理システムを構築し、その指針を明らかにすることである。 平成28年度は、放牧地に関する合意形成の条件を検討するために、牧畜システムの歴史的変容を探った。その結果、ボジ高原では人口圧に伴って、ウシのハードサイズが大幅に縮小していたことが明らかになった。ハードサイズの縮小には、富の象徴であったウシの役割が衰退し、ウシの婚資としての意義が形骸化していたことが影響していたが、一方で、家畜商の媒介により外部地域に繁殖を依存できる体制が整えられたことも大きかった。つまり、市場にウシの再生産をゆだねることで、域内での繁殖のための子ウシやメスウシを積極的に維持する必要がなくなり、牛耕に必要な最低限の頭数のオスウシを飼うことができるようになった。ハードサイズの縮小により放牧圧は抑えられ、土地紛争の発生を回避することにもなった。 本研究から、1)合意形成の要件を抽出するためには資源利用の歴史的変容を考慮にいれることが重要であること、2)外部地域とのモノや人の流れが土地紛争を回避する手段となりうることが明らかになった。 以上の内容については査読付き英語論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タンザニアの調査地に赴くことができず、これまで入手したデータの分析にとどまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、タンザニアで現地調査をおこない、まだ実施できていない研究内容を進めることで、主体的な協議を基盤とした放牧地管理システムを構築する。
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Causes of Carryover |
育児のため、タンザニアで現地調査をおこなうことができず、海外旅費がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査や海外での学会発表のための海外旅費として使用する他、書籍購入費や英文校閲代にあてる。
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