2016 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of magnetic atom/molecule and Rashba splitting on surface electrical conduction
Project/Area Number |
15K21112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八田 振一郎 京都大学, 理学研究科, 助教 (70420396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超薄膜 / 表面電子状態 / 有機薄膜 / 電気伝導 / 角度分解光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では金属超薄膜の電気伝導特性に対する吸着子(主に分子)の効果を明らかにする目的で、超高真空中での4端子電気伝導度測定を行った。さらに、低速電子回折(LEED)により吸着構造の解析、角度分解光電子分光法(ARPES)により電子状態の解析を行った。また、これらの実験に必要な蒸着速度を精密制御する装置および磁場印可装置の製作も行った。 Si(111)基板上のIn超薄膜は極低温まで金属的な電気伝導特性をもつ2次元金属である。この表面に吸着した鉄フタロシアニン(FePc)分子は、基板が室温のとき規則的に配列し、(√19×√19)の超格子をなすことが分かった。格子サイズから分子は分子面を基板と平行に吸着していると考えられる。一方、基板が90 Kの場合には無秩序であった。どちらの場合にもFePcの吸着による抵抗率の増加が観測されたが、室温蒸着の方が2倍以上大きく増加した。ARPES実験ではFePcの吸着によるIn超薄膜の電子バンド構造の変化は観測されず、抵抗率の増加は伝導電子密度の減少では説明できないことが分かった。第二次年度においては、規則的に配列したFePc分子膜の成長と抵抗率変化の関係を詳細に調べた。抵抗率は始め吸着量にほぼ比例して増加したが、1分子層が完成したとき、その傾きが明らかに緩やかになった。2分子層が完成するときにも同様の変化が観測されたが、それ以上では抵抗率は吸着量に依存しなくなった。層数に応じた変化が明瞭に現れたことからFePc超薄膜は第2層目まで層状成長していることが分かった。とくに重要な結果は、電気伝導度が分子の吸着に対して非常に高感度(0.01分子層以下から検出可能)に変化し、その大きさが吸着状態によって変化したことである。これは超薄膜の伝導度測定が磁場や光などの外場に対する分子およびその吸着界面の応答の測定に有効な実験方法であることを示している。
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Research Products
(10 results)