2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前日本における外交官のキャリアパスと省内派閥の再検討
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15K21123
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
矢嶋 光 名城大学, 法学部, 助教 (30738571)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本政治外交史 / 戦前 / 外務省 / キャリアパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦前の外交官のキャリアパスを分析することを通じて、外務省内の派閥対立と政策対立との関係を明らかにすることである。この目的を達成するために、平成28年度は、キャリアパス分析に用いるために前年度に収集した外交官の人事記録をエクセルファイルに入力する作業を進めた。これと平行して在欧の外交官の活動や彼らと本省との関係を分析するために、英国国立公文書館で資料調査をおこなった。このほかの成果としては、第28回比較憲法学会で「日本国憲法第9条と集団安全保障」と題する報告をおこなった。これは、本研究において連盟外交の経験を豊富にもつ外交官として「連盟派」に位置づけられる芦田均の戦後の憲法観をとくに9条と集団安全保障との関わりから論じたもので、戦後政治における「連盟派」外交官の動向に関する事例研究の一つに位置づけられるものである。加えて、論説「戦前外務省の人事と組織」を本務校の紀要に執筆した。これは、大臣および次官・局長といった幹部となる外交官のキャリアパスを分析したもので、その結果として戦前外務省では局を横断するのではなく、同じ局のなかで昇進を重ねながら幹部に就任すること、また在外勤務においても局と関連の強い国や地域に勤務すること、が明らかになった。そしてこれらの特徴から、外務省の幹部となる外交官はジェネラリストというよりも一定の地域や業務に関する専門性をもつこと、それゆえ幹部となる外交官であってもそのあいだに政策志向の違いが生じること、が示唆されることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27、28年度に収集した人事記録をもとにしたキャリアパス分析によって、戦前外務省の人事の仕組みや組織的特徴を一定程度明らかにすることができたため、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、ひきつづき外交官の個人文書の収集と英国国立公文書館での資料調査をおこなうことである。平成29年度は、これまで収集した人事記録と資料をつき合わせて、本研究が明らかにした外交官のキャリアパスと、従来の研究が明らかにしてきた外務省の政策派閥とのあいだに関係があるのか、ないのか、関係があるとすればそれはどのようなものか、といった点を検討する。
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Research Products
(3 results)