2015 Fiscal Year Research-status Report
「欠損化」を鍵とするチオラト金属クラスターの合理的集積化
Project/Area Number |
15K21127
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉成 信人 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10583338)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属クラスター / 欠損型クラスター / チオラト錯体 / 多核金属錯体 / 発光性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、優れた安定性をもつ硫黄架橋金属クラスター化合物を積極的に「欠損化」し、反応サイトとして活用する新たな手法の開発を目指している。
平成27年度では、まず、欠損化反応に耐えうる安定外殻をもつクラスターを得るため、錯体配位子の分子設計と合成に取り組んだ。含硫アミノ酸であるD-ペニシラミン、L-システインを素材に、窒素部位を連結した誘導体(N,N'-ethylenebis(D-penicillamine)、N,N'-ethylenebis(L-cysteine))を合成し、さらに、これらを配位子として八面体型コバルト(III)イオンや平面型ニッケル(II)イオンとの錯形成を試みた。その結果、2つのチオラト硫黄ドナーをもつ錯体配位子([M(L)]n-)の合成、単離に成功している。引き続き、これらの錯体配位子は、11族金属イオンである、銅(I)イオンとの反応性を調査しており、いくつかのクラスター錯体の合成にも成功している。
また、含硫アミノ酸類のみをもつ単純な錯体配位子だけではなく、ジホスフィン類と含硫アミノ酸の両方を配位子としてもつ白金(II)錯体配位子([Pt(dppp)(L-cys)])およびパラジウム(II)錯体配位子([Pd(dppp)(L-cys)])も新たに合成、単離している。この錯体に関する実験の過程で、[Pt(dppp)(L-cys)]が、メタノール蒸気に暴露した場合にのみ強い黄色発光を呈することを偶然見出した。このようなTurn-On型のメタノール応答型のベーポクロミック発光は極めて珍しく、発光材料の観点からも興味深い成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に必要な安定なチオラト単核錯体の合成は達成しており、これらを原料として、クラスター形成反応も順調に調査を進めている。また、生成物の一部は目的とする構造欠損を有する金属クラスター類であり、合成戦略にも問題はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度中に観測している欠損部位をもつ金属クラスター錯体の単離および同定を急ぎ、早期にそれらの構造特性や反応性の調査に進む。結晶構造決定にこだわらず、NMRや質量スペクトル測定法を用いた溶液研究を軸に据えて、研究の加速を図る。
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Causes of Carryover |
平成27年度中の学術論文投稿に関する支出が英文校閲見送りなどの都合で当初計画よりも少なくなったほか、日程見直しなどにより出張経費負担も当初見込みよりも少額で済み、直接経費の使用額に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のとおり、平成28年度は各種分光分析を軸に研究を展開する計画である。その際、平成27年度の余剰金を利用して外部依頼分析を積極的に実施し、研究の加速を図る。また、研究スピードアップに伴う消耗品の増加分を支えるために物品費としても使用する。
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Research Products
(3 results)