2015 Fiscal Year Research-status Report
オープン教材を普段使いできるようにする学習支援体制の構築
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15K21129
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山内 保典 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (40456629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ユーザー・エクスペリエンス / グループインタビュー / e-learning / 自己実現 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の主たる研究実績は、オープン教材の利用に関心を持つ、年代と性別の異なる市民を対象としたインタビュー調査である。これは研究実施計画に従って、「目的1:オープン教材を利用する新しいユーザー像と、その利用法を具体的に描く」を達成するために行ったものである(研究実施計画のSTEP1)。 具体的には、事前調査でオープン教材の利用に関心を持つ対象者を抽出した後、年齢層(壮年期、中年期、高年期)×性別で、6つの市民グループ(各グループ2-3名)を構成し、グループインタビューを実施した。 その結果、例えば、以下のようなユーザー像が得られた。―主人公は、高年期の男性。長年、パソコン関連の仕事をしてきた。定年退職後、偶然、地域コミュニティのWEBサイトの管理やパソコン相談役を任された。せっかくなら、分かりやすく、体系だって説明をしたいし、SNSなど、新たな技術についての相談にもこたえたい。そこで彼はオープン教材で基礎や最新の動向を学びたいと考え始めた。― その他、経験の質を高める、成功者に学ぶ、人間関係の悩みを解決する、仕事や生活に必要な知識を得る、キャリアを広げるための準備をする、自分が何に興味があるのかを探す、といった、ライフステージに応じて自己実現を目指す多様なユーザー像が得られた(STEP2)。 インタビュー調査以外では、「目的2:既存のオープン教材のキュレーション」に関連して、既存オープン教材の収集およびリスト化」を進めた(STEP3)。リスト化を通して、リンク切れや独自の動画共有システムの不具合、各動画の質や冗長性のバラつきが大きい現状が明らかになった。またSTEP4については、後述するように申請者の異動が決まったため、平成27年度中については、いったん保留することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は大きく3つの目的に分かれる。平成27年度の計画は、主に目的1と目的2に焦点が当たっており、これらはおおむね順調に進展している。一方で、準備を始める計画だった目的3については、申請者の異動に伴い、いったん保留することにした。 「目的1:オープン教材を利用する新しいユーザー像と、その利用法を具体的に描く」については、研究実施計画に従い、オープン教材の利用に関心を持つ、年代と性別の異なる市民を対象としたインタビュー調査を行った(STEP1)。予算配分の結果を受け、調査内容や規模などの調査設計の見直しに時間がかかったが、おおむね計画通りに進展している。ただし、その結果をまとめるSTEP2については、目的2との関係で最終成果物のイメージを変更すること、異動に伴い大阪在住のデザイナーへの依頼が難しくなったことから、一部保留にしている。 「目的2:既存のオープン教材のキュレーション」について、実施計画に従い、既存オープン教材の収集およびリスト化を行った(STEP3)。その結果、予想以上にリンク切れや独自の動画共有システムの不具合、各動画の質や冗長性のバラつきが大きいことが明らかとなった。そして平成28年度の計画について、既存の動画を集約するだけでなく、数を絞り込んだ上で再編集を行うなどの調整が必要だとの認識に至った。それに伴い、最終的な成果物のイメージも変更することが望ましいと考え、その構想づくりを優先する形で計画を進めている。 「目的3.学習コミュニティの形成と効果測定」に関しては、年度途中までは、大阪大学と関係したイベント枠の活用を見込んでいた(STEP4)。しかし申請者の東北大学への異動が決まり、東北大学でどのようなイベントが可能なのか分からないため、準備はいったん保留することにした。そのため計画を基準とすると、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に従い、平成28年は目的2と目的3が研究開発の中心となる。ただし、その推進方策については変更を予定している。 目的2(STEP5・6・7)に関して、平成27年度の成果を踏まえ、キュレーション作業の具体的な内容について見直しを行う。当初は、既存オープン教材とニーズをつなぐために、学生バイトによるユーザーコメントの追加を中心に考えていた。しかし、平成27年度に行ったリスト化の結果、予想以上にリンク切れや独自の動画共有システムの不具合、各動画の質や冗長性のバラつきが大きいことが明らかになった。そこで既存の動画を集約や整理するだけでなく、数を絞り込んだ上で動画自体を再編集する必要があるとの認識に至った。現在は、平成27年度のインタビュー調査で明らかになったユーザー像に合わせて、既存の動画の内容を組み合わせて編集し、それを例示するという方針を立てている。対象となる動画の数は減少するが、例を示すことに合わせて、その例の編集の際に用いた原則や方法を明示することで、持続可能な再編集プロジェクトにつなげることを可能にする。 目的3を達成するために計画していたイベント(STEP8・9)については、当初は大阪大学に関連したイベントの枠を利用する予定であった。しかし申請者が異動することが決まり、その枠が利用できなくなったことから、見直しを始めている。回数や規模、内容などは、利用可能なリソースを調べ、柔軟性を持って再調整する。ただしオープン教材を使った、オフラインでの学習コミュニティを形成するという目的は極力変更しない方針である。
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Causes of Carryover |
理由は3つある。1つ目は、調査対象者の当日キャンセルにより、謝金に余剰が生じたことである。2つ目は、テープ起こし費用が予算よりも安価になった(インタビュー時間の長さで変動するため、長引いた時に備えて多めの予算を見込んでいたものの、結果的にそこで残金が生じた)ことである。3つ目は、STEP2でデザイナーとの打ち合わせの開始を見込んでいたが、それを平成28年度に延期したことである。予算配分の結果生じた不足分を、インタビュー調査以外で吸収することにしたため、デザイナーに依頼するには予算的に難しい状況だった。加えて、目的2関連調査を受け、最終成果のイメージを変更することにしたため、平成28年に合わせてデザイナーに依頼した方がより効率的であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由3で示した通り、この繰越金は、平成28年度の予算計画で「その他」に計上している、WEBデザイナーへの依頼をする際に、上乗せする形で使用する計画である。
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