2016 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷における軸索ガイダンス分子DCCを用いた効率的な軸索伸長法の開発
Project/Area Number |
15K21134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大川 都史香 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (90418880)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軸索ガイダンス / 脊髄損傷 / 嗅粘膜移植術 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で正しく神経回路網が形成される為の基本原理として軸索ガイダンスという概念があり、神経接着因子や神経軸索ガイダンス分子、神経活動シグナルが関わっているとされる。申請者の所属施設では、慢性期完全脊髄損傷に対する自家嗅粘膜移植法の臨床研究を2002年より行い(研究代表者:岩月幸一)、2011年に我が国の先進医療の指定を受け現在に至る。本法が施行された胸髄損傷8例中3例において、随意筋の下肢筋電図の発見を認め、1例においてはリハビリ期間の後に杖歩行が可能となっている。当プログラムで実施しているリハビリテーションは神経活動性シグナルによる軸索ガイダンスに相当すると考えられるが、現状では歩行可能となるまでに移植後3年のリハビリ期間を要している。申請者は神経軸索ガイダンス分子に着目し、嗅粘膜移植法に付加する新規の神経伸長促進法を開発することを目的としている。これまでの当グループでの知見で嗅粘膜自体に神経幹細胞が含まれ、嗅粘膜上でのRelay-neuronの新生が確認されている。移植した嗅粘膜内でも軸索ガイダンスが起こっていると仮定し、ウェスタンブロット法により、ラット嗅粘膜での軸索ガイダンスリガンドNetrin-1および軸索ガイダンスレセプターDCCの発現量を調べた。マウスの脊髄損傷モデルを使用し、in vivoで軸索ガイダンス分子を発現させる手法を模索した。8-9週齢のマウスに吸入麻酔下で第10胸椎椎弓切除を行い、培養細胞を移植する技術を確立した。astrocytoma cell lineにサイトメガロウイルスベクターを用いて目的の遺伝子を導入し、48時間培養したものをin vivoで定位的注入装置を用いて移植した。免疫抑制剤を1週間投与した後にマウスをsacrificeし、移植した細胞の生着を確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、徐放化した軸索ガイダンス分子を脊髄損傷モデル動物に留置し軸索伸長が促進できるかを検討しようと計画した。従来法の嗅粘膜移植に対し、徐放化した分子を付加することで伸長効果を増大させることができるかどうかを調べる予定であった。しかし徐放化した分子を直接脊髄内に留置する手法に問題があった。ベクターを使用して軸索ガイダンス分子を発現させた嗅粘膜細胞を移植するほうが、より現実的であると考え改めたため、その手法を確立することに時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
astrocytoma cell lineにサイトメガロウイルスベクターを用いて目的の遺伝子を導入し、培養したものをin vivoで定位的注入装置を用いて移植する手法は、研究室グループ内で確立された (Ohnishi YI et al, JNS spine. 2016)。我々はこの手法を嗅粘膜培養細胞に応用し、より効率よく軸索伸長に結びつく移植システムを探索したいと考えている。
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Causes of Carryover |
徐放化した分子を直接脊髄内に留置する手法に問題があった。ベクターを使用して軸索ガイダンス分子を発現させた嗅粘膜細胞を移植するほうが、より現実的であると考え改めたため、その手法を確立することに時間を費やし、動物実験が遅れている。動物購入にかかると見込まれた費用が当該年度に消費できない状況となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し費用は、嗅粘膜採取用の動物および移植実験に使用する動物の購入費に主に当てる予定である。
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