2015 Fiscal Year Research-status Report
身体的自己意識を生みだす右半球前頭-頭頂回路の学童期から大人への形成過程の解明
Project/Area Number |
15K21138
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
守田 知代 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60543402)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自己意識 / 右半球 / 前頭頭頂領域 / 自己身体 / 上縦束 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの大脳左半球の言語機能優位性はよく知られている。その一方で、右半球が示す優位機能は未だ明らかでない。本研究では、ヒトの右半球前頭-頭頂回路が自己意識を生み出すための主要な神経基盤であるという仮説をたて、その検証をおこなった。 右利きの成人20名を対象とし、①身体的な意識を伴う自己身体認知課題、②高次な自己意識を伴う自己顔同定課題を行っているときの脳活動を機能的MRIにより計測した。その結果、これら2つの課題は、共通して右半球の腹側前頭-頭頂領域を賦活させることが確認できた。また、これら右半球の活動は、反対側の相同領域の活動よりも有意に強く、右半球優位性が認められた。加えて、これらの共通領域は、前頭-頭頂領域を繋ぐ主要神経線維である上縦束(superior longitudinal fasciculus: SLF)の中でも最も腹側に位置するSLFⅢで結合される領域に存在していることが分かった。 さらに、小学生20名および中学生20名を対象に同様の実験を行った。行動レベルでは成人との間に有意な違いは見られなかったが、脳活動レベルでは成人とは大きな違いがみられた。小学生では、①自己身体認知課題において両半球の前頭-頭頂領域に活動がみられ、②自己顔同定課題ではどちらの半球にも活動がみられず、成人でみられたような右半球優位な活動は認められなかった。一方の中学生では、ともに成人様の右半球優位な活動がみられた。これらの結果から、身体的な意識と、高次な自己意識との間に共通する神経ネットワークが、右半球前頭頭頂領域に存在すること、そしてこのネットワークは中学生の頃に成熟することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27に予定していた成人を対象としたMRI実験に加え、H28に予定していたすでに終了し、自己身体認知および自己顔同定の共通基盤の存在を明らかにするとともに、その基盤の発達過程の解明にむけた子どもの脳の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
右半球が示す優位機能を明らかにするうえで、今後は機能的な半球側性化に加えて解剖学的な半球側性化を合わせて検討する必要がある。個人ごとに拡散テンソル画像(DTI)を撮像し、SLF(Ⅰ-Ⅲ)を描出することで、右半球前頭頭頂ネットワークの発達過程を多角的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた拡散テンソル画像(DTI)の撮像に、新しい機械および技術が必要となることが判明し、その実験は次年度に行うことに変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
拡散テンソル画像(DTI)のための実験被験者を追加するために、そのリクルート費用および謝金費用に使用する。
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Research Products
(7 results)