2017 Fiscal Year Research-status Report
1770年代から1830年代におけるガイスト概念の変遷―ゲーテを中心に
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15K21149
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
久山 雄甫 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70723378)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガイスト / ゲーテ |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲーテを中心に、近代ドイツ思想史におけるガイスト概念の内実を究明しようとする本研究課題について、平成29年度は以下の2点について研究を進めた。 1)ゲーテ晩年の重要な思想詩「一と全」で使われる「世界魂(Weltseele)」および「世界ガイスト(Weltgeist)」概念について考察した。従来の研究ではこれらの意味内容に諸説あったが、本研究では、そもそもこれらの語は意図的に明確な意味内容を担わされてはおらず、言語の地平を超越したものを指し示すだけの象徴的空白として機能しているという解釈を示した。この内容は昨年から継続して取り組んできた研究の成果であり、平成29年6月のドイツ出張に際し、ダルムシュタット・ゲーテ協会(講演会)および国際(ヴァイマル)ゲーテ協会(若手ゲーテ研究者シンポジウム)において発表を行った(双方とも招待講演)。現在ドイツ語論文としての発表を準備中である(国際ゲーテ協会の年鑑Goethe-Jahrbuchに掲載決定済だが、平成30年度の研究実績として記載予定)。 2)若きゲーテの神学論文「聖書の二問題」にみられるプネウマ(聖霊)論が、のちのゲーテ自然科学の背景をなしている可能性があることを論証した。その両者をつなぐ文学的リンク、すなわち宗教的経験と科学的認識の結節点となった文学的転回を、本研究では「原ファウスト」における大地ガイスト(地霊)の描写に見出した。この研究内容は「ヌースか、プネウマか?――若きゲーテのガイスト概念と聖霊、悪魔、科学」というタイトルのもと口頭発表および雑誌論文として公表された。(1)に挙げた「一と全」研究はゲーテ晩年期の思想をテーマとするものであったが、同時に初期ゲーテの思想をも扱うことで、平成29年度にはゲーテの長い一生を全体的に俯瞰しながら研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、平成29年度もほぼ計画通りに研究を遂行することができた。なかでも国際ゲーテ協会で研究発表を行い、世界中のゲーテ研究者と有益な意見交換ができたことは非常に意義深かった。この研究発表は、本科研費申請時に研究計画を立てた際、ひとつのクライマックスと位置づけていたものであり、これを着実に遂行できたことで、のこりの研究課題についての取り組みを進めていくための見通しが立った。ただし他方で、平成29年度は、この研究課題を起点としてさらに広がりうる多くの新しい問題系が見えてきた一年でもあった(これについては下記「今後の研究の推進方策」で詳述する)。そのことも含めて、全体的な進捗状況はおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本科研費助成の最終年度である。当初の計画では、これまでの研究成果を単著としてまとめて公刊するとしていた。これまで予定されていた研究計画は順調に進捗しており、論文の本数も量だけでみれば着実に増えて十分にあり、すでに出版社からのオファーもいただいている。しかしながら上記のように、ここまで研究を進めてきたことにより、本研究課題に内在しているより大きな問題系がはっきりと見えてきた。 1)具体的には、第一に、ゲーテのガイスト概念を根本から理解するためには、特にその前提となる時間論と存在論をしっかり論じる必要があることが明らかになった。このテーマについてはすでに一昨年度からゲーテの現在概念を中心にして断片的に取り組んできたが、これを総合的に深めることなく中途半端な扱いのまま単著を公刊しても、本質的な意味がないと考えるにいたった。よって本年度は、ゲーテ思想における時間論と存在論という大きなテーマを、本研究課題との関連に的を絞って扱うことにする。このことにより単著の公刊がやや遅くなることが予想されるが、拙速に成果を公表するよりも、より広く深い内実をもたせて刊行物を世に問うたほうがよいと判断する。 2)さらに第二に、本研究を通じて明らかになったゲーテ思想の側面は、現代思想と関連付けて論じられるべきことが明らかになった。この課題は本研究課題とはやや次元を異にするが、時間論と存在論、さらには「根源」や「霊」の問題を通じて、ゲーテと(たとえば)デリダあるいはドゥルーズの思想を結びつけることは、従来のゲーテ研究でほとんどテーマ化されてこなかったにも関わらず、きわめて重要な課題である。平成30年度には、将来的な研究の発展可能性をにらんで、こうした現代思想との結びつきにも取り組み始める。この作業を通じて、もともとの本研究課題における議論にもいっそうの厚みを持たせることができると考えている。
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Causes of Carryover |
図書費として使用するはずであったが、年度末の調整がうまくいかず、ごく一部(7750円)が繰越となった。計画通り、平成30年度、研究図書の購入に充てる。
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Remarks |
本科研費による研究成果を使って以下の書評を執筆した。久山雄甫「ポスト・ヒューマンの時代に、ゲーテを読むために」仲正昌樹『教養のためのゲーテ入門――「ウェルテルの悩み」から「ファウスト」まで』(新潮社、2017年)書評、『モルフォロギア』第39号(2017年)、121-124頁。
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Research Products
(5 results)