2018 Fiscal Year Annual Research Report
Goethe's Concept of "Geist" in the History of Ideas (1770's-1830's)
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15K21149
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
久山 雄甫 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70723378)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲーテ / ガイスト / プネウマ / 時間論 / 形態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度:(1)昨年度に引き続きゲーテ晩年の詩「一と全」に見られる「世界ゼーレ」と「世界ガイスト」という両概念を検討し、それらが意味論的な空所となっていると解釈する論文を完成させた(Goethe-Jahrbuch Bd.135掲載決定済)。(2)ゲーテ形態学におけるガイスト概念は一部でI・P・V・トロクスラーを典拠とするが、ゲーテとトロクスラーの思想的差異を指摘した論文を執筆した(論文集Natur und Geist所収決定済)。(3)「ガイスト的形相」をめぐるゲーテの新プラトン主義批判の核心が世界の脱ヒエラルキー化にあったことを示し、そこからゲーテ色彩論とアリストテレス思想の近縁性が導出できることを論文で主張した(『モルフォロギア』第40号掲載)。 研究期間全体:交付申請の時点では、1770年代から1830年代までの時期にガイスト概念の雰囲気的・感性的・具体的な意味内容が内面的・知性的・抽象的になっていく中で、ゲーテは時流に逆らい概念の原義を守ろうとしたという仮説を立てていた。しかし本研究を通じてゲーテはむしろ近代的思想文脈に応じてガイスト概念を「時」との関わりから再解釈していたことが明らかになった。18世紀後半からの世界観の時間化(ラヴジョイ、フーコー)に並行してゲーテのガイスト概念も時間化した。そこには全体性の理想と結び付いた過去や未来の表象が、時間的なずれによって直接的に知覚されないがために、かえって「現在」の深層=表層において知覚されるようになるという逆説構造を確認できる。この構造はゲーテ形態学思想の核心をなすと同時に文学作品にも反映しているが、晩年のゲーテ作品はこの構造そのものが幾重もの自己批判という戯れのなかで語るようになった。なお、ここに見られる「時」のイメージについては「根源」概念および「雰囲気」現象との関わりからさらなる研究が必要である。
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Research Products
(6 results)