2015 Fiscal Year Research-status Report
メタン発酵による組換え微生物の有効利用に向けた導入遺伝子の動態研究
Project/Area Number |
15K21150
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐々木 大介 神戸大学, 学内共同利用施設等, 特命助教 (00650615)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 高温メタン発酵 / 水平伝播 / 組み換え遺伝子 / 廃棄物処理 / 廃菌処理 / エネルギー回収 / GFP遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、高温メタン発酵槽の設置およびその安定運転をはじめに実施した。 メタン発酵の研究において、研究対象であるサンプル(微生物群集)が安定して得られることが最も重要である。そこで、その安定的な獲得のための連続運転を目的にして、自動化システムの構築を行った。具体的にはpH調整、攪拌スピード、ガス回収、基質の流入出のモニタリングと調節を自動で行う発酵槽(発酵容量:800mL)を作成した。この槽内に、家畜を由来とする堆肥の10%溶液を種汚泥として加え、グルコースを炭素源とする一般的な嫌気微生物培地を用いて運転を開始した。運転パラメーターは、発酵温度55℃、攪拌スピード100rpm、水理学的滞留時間10日で試運転を行った。メタン発酵の安定運転の評価については、最低でも1ヶ月以上のメタン発酵微生物群集の馴養が必要である。その間に生じたシステムの不具合を調整し、何度かの運転を実施した結果、現在では数々の問題を解決した高温メタン発酵の安定運転が可能となっている。 高温メタン発酵の運転パフォーマンスとしては、発酵の良し悪しを判断する上で重要なファクターである揮発性低級脂肪酸(有機酸)が挙げられる。現時点でその蓄積がほとんど起っておらず、150-250mL/日という安定したガス発生量が見られ、安定運転のためのシステム構築および運転パフォーマンスの獲得に成功している。この安定したパフォーマンスを発揮している高温メタン発酵槽に「遺伝子組み換え菌」として、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)遺伝子を、まずはプラスミドとして保持する酵母(Saccharomyces cerevisiae)を滅菌した状態または生菌の状態、別々に投入し、組み換え遺伝子がメタン発酵微生物群集に水平伝播するかどうかを評価するため、遺伝子組み換え酵母の大量培養の準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のように、メタン発酵の安定運転のシステム構築のために、幾度となく運転方法を改善した結果、予定していた「遺伝子組み換え菌体」の投入試験が遅れている。具体的な大きな問題の一つとして、グルコースを炭素源とする基質が保存中にコンタミしてしまい、解析対象として安定な微生物群集の構築ができない事態が頻繁に起った。これは、間欠タイマーで制御されたペリスターポンプと発酵槽、基質タンク間がシリコンチューブで介されているが、この中が何種類かの微生物群で自然に汚染されてしまうためであった。しかしながら、コンタミの問題を含め、それらを一つ一つ解決済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在では安定的な高温メタン発酵の自動連続運転が可能となっているため、予定されていた「遺伝子組み換え菌体」の投入試験により、外来遺伝子が廃棄物処理を行う微生物群集に水平伝播してしまうかどうかについて評価を順次行っていく予定である。はじめにGFP遺伝子をプラスミドとして保持する酵母を組み換え菌体として、それを滅菌処理した状態と未滅菌の生菌の状態でメタン発酵槽へ投入した時の微生物群集の動態・組み換え遺伝子の残存とその場所に関して特定するための解析を進める。次に、同遺伝子を染色体上に保持する酵母を解析対象として同様の試験を進める。解析方法としては、核酸の分析だけでなく、代謝解析やGFPの蛍光の確認を行い、総合的に水平伝播の可能性について検証を行っていく。 現在は、研究計画の通り、酵母のGFP遺伝子を選択してその大量培養の準備を進めている。 組み換え遺伝子の動態次第ではあるが、投稿論文としてまとめる方向で研究を展開するとともに、学会での成果の発表を予定している。
|
Causes of Carryover |
オミクス解析用のPCを購入する予定であったが、購入は今年度に見送った。理由は、ハイスペックPCでそれぞれの解析ソフトを使用できるパイプラインの構築とその学習を今年度は行ったためである。 また、予定していた学会の年次大会への参加が、大学行事の関係で不可能になり、旅費の使用が叶わなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、実際の解析結果を評価する必要があるため、準備が整い次第、PCを購入予定である。 また、消耗品も例えば次世代シーケンスのキットなど、高額なものが必要になってくるため、年度末までの使用には問題はないと考えている。 旅費に関しては、今年度は幾つかの学会へ参加を予定しているため、「旅費」としての使用を見込んでいる。
|