2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子組換えイバラキウイルスを用いた二本鎖RNAウイルス感染・複製機序の解明
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15K21152
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二本鎖RNAウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、昨年度作製した、EGFPで標識したVP6をIBAV粒子に取り込ませることで内殻を標識したIBAV(IBAV-EGFPdrep)および、外殻タンパク質であるVP2のシステインを標識したIBAVを用いて、BHK細胞とNMuLi細胞へのIBAVの吸着率の差を比較した。FACS解析の結果、顕微鏡観察とは異なり、 IBAVのBHK細胞とNMuLi細胞への吸着率に有意差がななく、IBAVは両細胞に同程度吸着・侵入することが分かった。よって、NMuLi細胞でのIBAVの増殖阻止は、細胞侵入脱殻過程以降、IBAV mRNAのタンパク質への翻訳過程で起こることが明らかとなった。 次に、効率よく遺伝子改変IBAVを作製するため、plasmid baseのIBAV遺伝子改変法(RGシステム)を開発した。これまでは、IBAVコア粒子を用いて人工合成したcore mRNA と、T7ベクターから人工合成した変異T7ssRNA とのリアソータント法を用いて変異ウイルスを作製していたが、plaque purificationによって目的の変異体を得るために、時間がかかった。また、全IBAV RNAを T7ベクターから人工合成して用いるRGシステムを目指したが、成功しなかった。今回、オルソレオウイルスのRGシステムを参考に、T7ポリメラーゼ発現ベクターとともにT7ベクターを導入し、細胞内でIBAV RNAを作らせる方法で、遺伝子改変IBAVを作出することに成功した。本RGシステムでは、確実に変異体のみを作製することができ、かつ、plaque purificationやRNAの人工合成の必要がないため、安価で迅速な変異ウイルス作製が可能になった。現在、蛍光タンパク質を組込んだVP6をもつ遺伝子組換えIBAVの外殻にテトラシステインタグ(TC-tag)を組込んだDL-IBAVの作製を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、IBAVタンパク質の抑制に関して、自然免疫に関わる因子ならびにオートファージ関連因子について調べる予定であったが、検出系に問題があったため、研究が進まなかった。しかし、FACS解析の結果、顕微鏡観察では差があると見られたBHK細胞とNMuLi細胞へのIBAVの吸着率の差は、実際には有意ではないことを明らかに出来たため、今後、ウイルスタンパク質合成機序に集中して研究を行うことができるようになった。また、効率の良い組換えIBAV作製系を開発したことにより、今後、より効率よく実験を行うことが出来るようになった。よって、本年度の研究は、やや遅れ気味だが、順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度はまず、H28年度に予定していたIBAVタンパク質の抑制に関して、自然免疫に関わる因子ならびにオートファージ関連因子について調べる。また、H28年度に引き続き、DL-IBAVの解析と性状解析を進めるとともに、BHK細胞とNMuLi細胞でのLive cell imagingの系を完成させる。さらに、翻訳開始因子の動態をRT-qPCRを用いて解析する。
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