2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21155
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
丹羽 孝仁 埼玉大学, 教育機構, 非常勤講師 (10736268)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 国際人口移動 / 労働市場 / ラオス / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2015年末に正式に発足されたAECにより,人・物・金の国境を越えた移動がより活発になるグローバル経済が進行する大メコン圏において中心的な役割を担うタイに着目し,タイに入国するラオス人労働者に関わる労働市場の変化を明らかにすることを目的としている.今年度の研究は以下の2点に集約される. 第一に,2010年の人口センサスを全都県で入手するとともに,バンコク首都圏や東北タイの数県に限って20%無作為抽出の個票を入手した.なお,2010年の人口センサスは,外国人の捕捉率が10年前と比べて格段に上昇している. この人口センサスのデータを分析し,タイ人と外国人の就労状況と居住構造の比較を行った.残念ながら2010年の個票データには回答者の詳細な居住地情報が匿名化処理の過程で欠損しているため,小地域単位でのGIS分析は困難となっている.空間的な視野での分析には不備があるものの,就労の特徴と世帯の構造の関連性については分析が可能であり,この分析結果については,2016年8月に北京で開催されるInternational Geographic Congressにて報告予定で,すでにアブストラクトのレビューを通過している. 第二に,ラオス人労働者のライフコースに着目した働き方の変化を明らかにするため,東北タイを対象としてフィールド調査を実施した.国境からの距離に応じて働き方や移動の仕方に差が現れると仮定し,ノーンカーイ県,ウドーンターニー県,コーンケン県の3地点で構造化アンケート票を用いたインタビュー調査を2016年3月に実施した.これに先立ち,2015年9月にカウンターパートナーであるコーンケン大学のPutsyaninunt准教授と調査地の選定とアンケート票の改善を目的としたプレ調査を実施した.3月の調査の結果,合計100名の回答を得ている.この分析は2016年度に進める予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の2つの事情から上記評価とした. 第一に,本研究の特徴の1つである,タイ側ラオス側の両側面を見る視点を見直したことである.東北タイ,特に2015年度に十分な回答者数を得られたノーンカーイ県で就労するラオス人に限って言えば,ラオス側の村を調査する必要性がないと考えられるからである.これまでに調査経験のあるバンコク都の事例と異なり,東北タイで就労するラオス人労働者の多くは,メコン川を渡った対岸のラオス首都ヴィエンチャンの人たちである.すなわち,彼らの出身は都市部であり,都市と農村間の人口移動として捉えることはできない.それ故,彼らの出身村での調査そのものが本研究の上でもそれほど重要ではないと捉えられる.そのため,2016年度も東北タイで就労するラオス人労働者の調査に集中して行う. 第二に,統計解析の途上で,従前より使用していたWindowsデスクトップPCの故障に見舞われた.本研究では人口センサスの個票データという大規模データセットを使用しているため,本研究で予算計上していたMacノートPCでは解析が困難を極める.そこで急遽MacデスクトップPCを購入し,解析環境を整え,研究遂行に支障が出ないようにした.
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度は,第一に前年度末のフィールド調査結果の分析を進めることである.データは100名分で,現在データの入力と整備が終わったところであるが,現時点の印象では,これまでラオスとタイの国際人口移動では確認されていないタイプの移動を確認している.すなわち,それは恒常的な人口移動でも,出稼ぎの移動でもない.これらの中間に位置づけられそうな単身赴任型の人口移動である.移動をめぐる二国間の政治的対応が,この新たな動きの背景にありそうである.これは,今後の分析により明らかとなり,ラオス人労働者のライフコースの中で国際人口移動の位置づけを明らかにすることができると考えている. 第二に,東北タイにおいてさらなるフィールド調査を進めることである.データ数に問題を抱えるコーンケン県での調査を継続することと国境沿いに比較的大きな都市を形成するウボーンラーチャターニー県での調査実施を検討している.
|