2015 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲な放射線癌治療を可能にする次世代型DDSキャリアのin vivoへの応用
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15K21156
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 勇哉 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40728218)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / バイオナノカプセル / 抗癌剤ドキソルビシン / 放射線増感剤 / 無機ナノ粒子 / 放射線治療 / Affibody / in vivo |
Outline of Annual Research Achievements |
ドラッグデリバリー用キャリア(B型肝炎ウイルスのエンベロープタンパク質由来のバイオナノカプセル; BNC)は、in vitroにおいて一定の成果を挙げている。そこで、今後臨床応用を目指すために、担癌マウスを使用してin vivoでの有効性を示す。抗癌剤や放射線増感剤を封入したBNCの細胞特異的な送達によって低侵襲な治療法の開発を目指す。これを達成するために、以下の3つの項目を検討中である。 Ⅰ.「様々な癌細胞を標的化可能なBNCの開発」では、EGFR標的とIGF1R標的のBNCを作製している。EGFR標的によって幅広い癌細胞に対応し、応用範囲の拡大が期待できる。また、IGF1R標的によって癌細胞だけでなくBlood Brain Barrierの突破を目指す。現在この2つのBNCを作製中である。 Ⅱ.「各種Affibodyを提示したBNC/LP複合粒子によるin vivo薬剤デリバリーの検証」では、HER2-positiveなヒト卵巣癌細胞を担癌させたマウスに抗癌剤のドキソルビシンを封入したZHER2-BNC/LPを尾静脈投与した。その結果、腫瘍体積増加の抑制に成功した。つまり、in vivoにおいてこの粒子が癌細胞への標的化能力を有し、その細胞内で薬剤の効果を発揮させることが可能であると示唆された。 Ⅲ.「無機ナノ粒子とのハイブリッド化による新規治療法の開発」では、無機ナノ粒子をBNCで腫瘍に集積させてX線照射を行うことで吸収線量を増大させ、X線治療の効果を高める。その放射線増感剤として作用するポリアクリル酸修飾過酸化チタンナノ粒子(PAATiOx)をZHER2-BNC/LPに封入し、担癌マウスに尾静脈投与した。その後、X線を照射して腫瘍体積の変化を計測した結果、約20日間は腫瘍の増加が確認されなかった。つまり、放射線との併用によって、従来より低侵襲な治療を期待することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ.「様々な癌細胞を標的化可能なBNCの開発」では、既に取得済みのHER2標的Affibody提示BNC(ZHER2-BNC)に加えて、EGFRやIGF1R標的Affibody提示BNCやその両方をタンデムに融合したBNC等を開発している。現在、それぞれの発現Plasmidは構築済みで、酵母宿主での高発現株の取得を行っている。 Ⅱ.「各種Affibodyを提示したBNC/LP複合粒子によるin vivo薬剤デリバリーの検証」のために、抗癌剤のドキソルビシンを封入したZHER2-BNC/LPをSK-OV-3細胞担癌マウスの尾静脈から5日おきに計6回投与し、30日間腫瘍体積の変化を測定した。その結果、ドキソルビシン単体やZHER2-BNCを融合していないLPによるドキソルビシンの送達では腫瘍体積の増加が確認された。一方、ZHER2-BNC/LPでは、腫瘍体積の増加が抑制された。つまり、in vivoにおいても、この粒子の有効性を示すことに成功した。 Ⅲ.「無機ナノ粒子とのハイブリッド化による新規治療法の開発」では、担癌マウスにおける粒子の体内分布と放射線併用治療の効果を検証している。まず、PAATiOx単体を担癌マウスの尾静脈または腫瘍局所へ投与したときの体内分布を調べた。その結果、腫瘍への集積は確認できたため、現在はZHER2-BNC/LPで送達した場合との比較を行っている。また、PAATiOxを封入したZHER2-BNC/LPをSK-OV-3担癌マウスの尾静脈から投与し、その24時間後に5 GyのX線を腫瘍部分に照射した結果、腫瘍体積の増加が抑制された。つまり、ZHER2-BNC/LPによって腫瘍へ集積したPAATiOxが放射線の効果を増大させ、抗腫瘍効果を示したと思われる。現在は放射線未照射条件と比較し、その有効性を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ.「様々な癌細胞を標的化可能なBNCの開発」において、各種BNCの取得後は、それぞれの粒子の標的癌細胞においてその細胞特異性をin vitroで確認する。細胞特異性が確認されれば、ⅡやⅢのZHER2-BNCと同様にin vivoにおいて薬剤や無機ナノ粒子の送達を評価する。 Ⅱ.「各種Affibodyを提示したBNC/LP複合粒子によるin vivo薬剤デリバリーの検証」では、抗癌剤のドキソルビシンを封入したリポソーム製剤であるDoxil®との比較を行う。評価項目は腫瘍体積の抑制はもちろん、正常細胞への影響として肝臓への傷害等を血液検査によって確認する。この比較によって、ZHER2-BNCの融合が腫瘍蓄積後の細胞内取り込みに与える影響を検討する。 Ⅲ.「無機ナノ粒子とのハイブリッド化による新規治療法の開発」では、放射線との併用によって抗腫瘍効果が期待できることが示された。そこで、治療プロトコールを確立するために、ZHER2-BNC/LP(PAATiOx)の標的組織への到達時間と集積率、非標的組織への分布を検証する。この治療法で最も重要なのは、腫瘍への粒子蓄積量であると考えている。PAATiOx単体の尾静脈投与における腫瘍への蓄積量は1日後で10%弱であった。この蓄積量では放射線との併用による抗腫瘍効果は確認されなかったので、局所投与で効果があった25%程度を目指さなければならない。また、標的組織への集積によって役割を終えた粒子は速やかに体外へ排出されることが望ましいため、排泄能の評価も行う。さらに、投与する粒子濃度とX線線量を検討する。X線の照射条件もこれまでは単回照射のみであったが、数回に分けて照射する条件も比較する。癌組織の縮小効果及び近傍の正常組織に与える影響を検証することで、可能な限り低侵襲で抗腫瘍効果を発揮する条件を確立することを目指す。
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Causes of Carryover |
試薬のDoxil®の購入費を残していたが、実験の順序を入れ替えたために購入時期を遅らせることにした。そのため、その分の金額がそのまま次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に行う予定であったDoxil®との比較実験を翌年度に変更したため、当該助成金は翌年度助成金と合せて、この比較実験に使用する。
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Research Products
(2 results)