2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21165
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
那須野 亮 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (90708116)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質脱ニトロ化酵素 / ニトロ化 / 酵母 / グルタミン合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に見出した条件で培養・処理した酵母細胞から粗酵素液を抽出し、含まれる脱ニトロ化酵素(DNT)活性の測定を試みた。基質としては、精製した酵母グルタミン合成酵素(Gln1)をパーオキシナイトライト処理したもの(ニトロ化Gln1)を用いた。 まず、ニトロ化によって抑制されたGln1活性の回復を指標に、DNT活性の検出を試みたが、酵母粗酵素液中に含まれるGln1活性が非常に高く、精製Gln1由来の活性の変化を観察することはできなかった。続いて、抗3-ニトロチロシン抗体を用いたドットブロット法により、Gln1ニトロ化の減弱を指標にDNT活性の検出を試みた。酵母粗酵素液とニトロ化Gln1を、プロテアーゼ阻害剤存在下で混合し37℃でインキュベートすると、Gln1タンパク質量を示すシグナルが減弱しなかったのに対し、ニトロ化シグナルは減弱した。また、ボイルして失活させた酵母粗酵素液を用いた場合は、どちらのシグナルも減弱しなかった。このことにより、酵母粗酵素液からDNT活性を検出した。 続いて、硫安沈殿により分画した酵母粗酵素液を用いて同様の解析を行ったが、硫安分画前よりDNT活性が上昇した画分は見出せなかった。粗酵素液中の見かけのDNT活性が低すぎることが一因と考えられる。DNT活性の検出感度を上げるべく、反応させる粗酵素液量やタンパク質量を増加させたが、酵母が持つプロテアーゼ活性が極めて高くGln1自身が分解されて、プロテアーゼ活性とDNT活性の区別が難しくなったため、DNT検出感度の向上には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究により、ニトロ化Gln1を基質とした解析系により、酵母粗酵素液よりDNT活性を検出した。しかし、見出したDNT活性は、同様に哺乳類でニトロ化グルタミン合成酵素を基質として検出されているDNT活性に比べて、著しく弱い。反応させる粗酵素液量やタンパク質量を増やす試みは、酵母の極めて高いプロテアーゼ活性が原因となり、奏功しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ニトロ化Gln1を用いた系におけるDNT活性検出感度を上げるべく、主要なプロテアーゼを欠損した変異体の粗酵素液を用いて、DNT反応を行うことを予定している。一報、Gln1以外に、酵母ではいくつかのタンパク質がニトロ化されることが、ニトロ化部位も含めて報告されているため、Gln1の代わりにモデル基質として用いて、再度DNT活性の検出、および精製・同定を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた遊離3-ニトロチロシンを用いた脱ニトロ化酵素(DNT)の探索は困難と判明した。続いて、グルタミン合成酵素Gln1をモデル基質としたDNT活性測定により、酵母粗酵素液中からDNT活性を検出したが、低すぎる活性も一因となり、DNT分子の精製・同定には至っていない。よりクリアな活性を示す別の基質を用いる必要がある。最近同定された酵母におけるニトロ化タンパク質をモデル基質として、DNT活性の検出、DNT分子の精製・同定を目指す。また、その際、モデル基質のニトロ化は、酸化など別の修飾も引き起こしうるパーオキシナイトライト処理ではなく、大腸菌を用いた人工アミノ酸含有タンパク質発現系を用いて行う。
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