2019 Fiscal Year Research-status Report
アートプロジェクトによる地域社会変容に関する実証研究と理論構築
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15K21169
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小泉 元宏 立教大学, 社会学部, 准教授 (60625234)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アート / アートプロジェクト / 協働 / 市民参加 / 地域社会 / 文化事業 / 文化運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アートプロジェクトと呼ばれる地域社会との関わりを持つ文化事業・文化活動が、近年、日本各地で顕著に増加している社会状況のなかで、アートプロジェクトによる地域社会の文化・社会的活動への影響を実証的に明らかにすると共に、アートプロジェクトと社会の関係性に関する理論化を試みることを目的としている。 今年度は、過年度の調査研究を踏まえた成果発表ならびに論文・書籍の出版準備を中心としながら研究を遂行するのに加えて、研究成果をより精緻なものにするための補足的なデータ収集も実施した。その成果は、2019年8月1-3日にフィリピン・ドゥマゲテにおいて行われたInter-Asia Cultural Studies Society Conference 2019での研究発表や、共編著の出版を通じて発表した。それらにおいては、アートプロジェクトなどの文化事業への着目が、経済的利益など特定の社会的利益に資することを目的としながら開催される傾向がより明確化しつつあることが複数の国内事例において確認されたこと、また、それによって地域社会における文化活動の指向性が限定化される傾向が見られるという課題が存在することを指摘した。他方で、そのような「人々が期待する」文化事業や文化政策への着目のなかで、「人々が期待しない」文化・社会的実践としてのアートプロジェクトをアーティスト、市民らが連携しながら地域社会において進めつつあることを指摘している。 2019年度後期から2020年度前期にかけては、海外における研究滞在期間に入るために一時当該研究を中断するものの、これまでの成果を踏まえ、来年度はさらなる成果発表を進めていく所存である。海外における研究滞在によって、一部の出版・研究発表予定が当初の想定よりも遅れているものの、その点については後述する推進方策に則りながら研究成果の完成に向けて尽力していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、各調査研究を実施のうえ、研究発表や論文・著書の出版などを通じて研究成果を発表しており、今後も新たな研究成果発表の準備を進めている。しかしながら今年度は後期に海外における研究滞在に伴う期間が入ることとなり、また研究目的の精緻化のための検討に時間を要していることから、当初想定よりよりやや進捗が遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、予定していた成果発表の一部に遅れがあるため、改めて補助事業期間延長を図る次年度には、これまでの調査研究内容と分析を踏まえながら、学界ならびに市民に対する発表や出版、展示などを通じた研究成果の還元に向けて、準備・執筆作業を加速していく。それらを踏まえて、アートプロジェクトならびに芸術・文化事業による地域社会変容の過程ならびに社会制度や構造的課題についての理論構築を完成したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究課題における調査研究では、次年度、研究調査を通じて得た成果発表のために行う国際学会・シンポジウム参加関連費用(外国旅費、学会参加費)、ならびに、論文投稿にかかる費用の支出(校正費)や、それらを行うのにあたって必要となる予定の追加調査のための研究活動(国内旅費、謝金)を引き続き実施したいと考えているため、海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請を行った。次年度使用額は、それらの支出を見越したものである。
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