2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトES細胞由来心臓ペースメーカ細胞を用いた自動能生成メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K21170
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森川 久未 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (90707217)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ペースメーカ細胞 / ヒトES/iPS細胞 / イオンチャネル / 自動能 / 選別分取 / 心臓 / 再生医学 / HCN4 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓拍動は、洞結節ペースメーカ細胞から生み出される電気信号(自発活動電位=自動能)が起源となる。このため、心臓がどのようにして拍動するのか、またなぜ不整脈が起こるのかを明らかにするためには、ペースメーカ細胞を解析することが重要である。しかしながら、ヒトの心臓からペースメーカ細胞を直接取り出すことは不可能であるため、研究はほとんど進んでいない。そこで、本研究では、ヒトES/iPS細胞の心筋分化誘導系から、ペースメーカ細胞と心室筋細胞を選択的に分取する方法を開発し、ペースメーカ細胞の特性解析をすることを目標にした。 平成27年度は、ペースメーカ細胞を分取するためのヒトES/iPS細胞の遺伝子改変株の樹立と分取した各細胞の特性解析、また心臓の拍動制御に関連する遺伝子の探索を行った。まずヒトES/iPS細胞において、遺伝子改変を行い、ペースメーカ細胞を青色蛍光、心室筋細胞を赤色蛍光によって選択的に分取できる細胞株を樹立した。樹立した細胞株を心筋分化誘導すると、拍動する心筋細胞で特異的に青色・赤色蛍光を発現することが分かった。これらの細胞をセルソーターを用いて分取し、電気生理学的解析を行った。この結果、我々の予想通りに、青色蛍光発現細胞はペースメーカ細胞の特徴を、赤色蛍光発現細胞は心室筋細胞の特徴を示すことが分かった。現在、これらの細胞の遺伝子発現や薬剤への応答性などの詳細解析を行っている。加えて、分化誘導後の発生過程で、ペースメーカ細胞と心室筋細胞がどのタイミングで出現し、遺伝子発現がどのように変化するかをマイクロアレイ解析で調べている。以上の結果から、ヒトES/iPS細胞由来ペースメーカ細胞ならびに心室筋細胞の選択分取系の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通り、①ヒトペースメーカ細胞及び作業心筋細胞の分取精製法の開発と特性解析、②マイクロアレイによる拍動制御関連因子の同定、以上2項目を実施した。 ① に関して:HCN4陽性のペースメーカ細胞を分取できるヒトES細胞はすでに樹立済みであるため、本年度は、ヒトES(KhES-1・KhES-3)/ヒトiPS(409B2)細胞から心室筋細胞を分取できる細胞株の樹立を行った。心室筋細胞のマーカーである、Myosin Light Chain 2-ventricular(MLC2v)の第2エクソンにmCherry(赤色蛍光)を導入したベクターを、CRISPR/Cas9システムを用いて、各細胞にノックインした。細胞株を樹立後、心筋分化誘導を行い、CFPを発現するHCN4陽性細胞と、mCherryを発現するMLC2v陽性細胞を観察した。その結果、心筋分化誘導後7~10日目から、心筋拍動部位で特異的にCFP陽性細胞が出現し、その後20日目前後からmCherry陽性細胞が現れることが分かった。加えて、フローサイトメーターによる発現解析も行った。さらに、ホールセルパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析から、CFP単独陽性細胞からは自動能を発するペースメーカ細胞が、mCherry単独陽性細胞からは、心室筋型の活動電位を発する心室筋細胞を検出することができた。以上の結果から、目的の細胞が分取できていることが証明された。 ② に関して:樹立したHCN4-MLC2v二重改変ヒトES細胞を用いて、マイクロアレイ用サンプルの回収を進めた。①の解析から、サンプル回収日を分化誘導後0、7、10、14、21日目、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後と定めて、セルソーターを用いて各陽性細胞の回収を行った。現在、マイクロアレイ解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、当初の計画通りに研究を進める。これに加えて、不整脈患者に由来するペースメーカ細胞の解析も行う予定である。 平成28年度は、分取したペースメーカ細胞と心室筋細胞の詳細解析を行う。特に、電気生理学解析手法を用いて薬剤応答性の解析と、遺伝子発現解析を行う。これによって、ペースメーカ細胞で重要な機能を担う遺伝子を特定する。遺伝子が特定されれば、分取したペースメーカ細胞においてノックダウン実験及び過剰発現実験を行い、自動能との関与を解明する。 加えて、不整脈患者由来ペースメーカ細胞の解析を行うことも検討している。不整脈疾患としては、先天性QT延長症候群タイプ6(Long QT Syndrome Type 6 : LQTS6)(M54T変異)を標的にする。LQTS6は遺伝性不整脈のなかでも徐脈とQT延長とを併せ持つ稀な疾患である。我々は、コロンビア大学矢澤真幸助教との共同研究で、このLQTS6患者由来iPS細胞の解析を予定している。平成28年度は、LQTS6 iPS細胞に我々のペースメーカ細胞選別分取法を導入し、ペースメーカ細胞を特異的に分取できる実験系の構築を進める。疾患ペースメーカ細胞が分取できるようになれば、詳細な性状解析を行う計画である。これによって、正常のペースメーカ細胞と不整脈のペースメーカ細胞とを比較し、疾患病態の解明と、翻って、正常状態のペースメーカ細胞の理解を深める計画である。
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Causes of Carryover |
21,874円の繰り越しは、ほぼ当初予定通りに使用していると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大幅な変更はないが、全体的に研究のスピードアップを図る。
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[Journal Article] Electrophysiological properties of iPS cell-derived cardiomyocytes from a patient with long QT syndrome type 1 harboring the novel mutation M437V of KCNQ12016
Author(s)
Sogo T, Morikawa K, Kurata Y, Li P, Ichinose T, Yuasa S, Nozaki D, Miake J, Ninomiya H, Shimizu W, Fukuda K, Yamamoto K, Shirayoshi Y, Hisatome I.
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Journal Title
Regenerative Therapy
Volume: 4
Pages: 9-17
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Molecular Mechanisms Underlying Urate-Induced Enhancement of Kv1.5 Channel Expression in HL-1 Atrial Myocytes.2015
Author(s)
Maharani N, Ting YK, Cheng J, Hasegawa A, Kurata Y, Li P, Nakayama Y, Ninomiya H, Ikeda N, Morikawa K, Yamamoto K, Makita N, Yamashita T, Shirayoshi Y, Hisatome I.
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Journal Title
Circulation Journal
Volume: 79(12)
Pages: 2659-68
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Stabilization of Kv1.5 channel protein by the inotropic agent olprinone.2015
Author(s)
Endo R, Kurata Y, Notsu T, Li P, Morikawa K, Kondo T, Ogura K, Miake J, Yoshida A, Shirayoshi Y, Ninomiya H, Higaki K, Kuwabara M, Yamamoto K, Inagaki Y, Hisatome I.
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Journal Title
European Journal of Pharmacology
Volume: 15(765)
Pages: 488-94
DOI
Peer Reviewed
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